オランダ出張報告(収穫期)(2012/11/8)

中村 慶吾

 暦の上では立冬が過ぎ、ハウスも加温され、少しずつ年末の足音が近づいてきておりますが、皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。
 10月28日〜11月4日まで、弊社の輸入担当、品質担当と共に オランダに出張し、現地の動向や今年の球根について調査して参りましたので、下記にご報告致します。


@ オランダの気候と12年産の球根
  気候について簡単にまとめますと
気温:やや低め(統計的には平年並み)。  30℃を超えたのは8月の2日だけ。
温度の高かった2011年より低い。
日照:4-10月の日照時間(計)は
平年値 1175h
2010 1389h
2011 1317h
2012 1177h
    平年並みの日照ですが、近年では少なめと言えます。
雨量:総雨量は多くも少なくもありませんが、分散して少量の降雨が続いており、4月から1週間以上雨がなかったのは、8月中旬と9月上旬だけでした。生産者はほとんど潅水の必要がなかったほど。


球根の肥大は:LAがやや良。オリエンタル/OTは平年並みで、予定通り。
(肥大がすごく良かった11年オ産に比べると、かなり低い)
雨が多かった影響か、根は全体に少し細めで長いと感じました。

芽形成調査結果を2011年産調査と比べると下記の通りです。



今年の調査全体としては「芽が低い、しかし細くはない」という印象です。
 右の写真(オランダ南部のノバゼンブラの芽)が平均イメージに近いもので、くびれが少なく、芽幅の太い部分が低い感じがします。
 10月26−28日には△5℃〜△10℃の霜が発生し、地温は低いのでこれ以上芽形成は進まないように思います。


1ページ目のようなマイルドな気候と芽形成状態が、やや一致しない結果となってしまいましたので、“球根の力”の判定は難しいですが、オリエンタルの

などが予想されます。

A 収穫状況とスケジュール
オランダの気候温暖化などによる収穫の遅れ、船会社の省エネ運航による輸送期間の長期化で、新球の入荷が遅くなる事は以前からご案内しておりましたが、今年はまさにそれを感じる年となりそうです。
LAの収穫遅れ(入荷遅れ)がやや深刻な状況にあります。
 輸出会社の倉庫に、多くの球根が入荷し、検品待ちのパレットがたくさん並ぶはずの時期ですが、今年は全社とも(訪問時)数品種の入荷しかなく、前年同時期比で半分程度という会社もありました。
LAの収穫遅れの要因としては、
1.夏に雨が多く、ボト予防の消毒を強くしたため、枯れ方が遅れた。
2.販売の遅れで、収穫できずに待っている。(売れなければ廃棄も検討)
3.LA専業の生産者が増え、収穫時期が10月下旬〜12月まで分散している。
  (以前は、多くのオリエンタル生産者がLAも作っていて、オリエンタルを収穫する前にLAを済ませなければならなかった。)
※オリエンタルの収穫はこれからです。畑の枯れ方は平年並みで、ここにきて気温がぐっと下がってきていますので、遅れは取り戻すかもしれません?
 オランダから日本までの輸送が1週間長くなり、LAの収穫は7日〜10日遅れで、合せると 去年に比べて半月ほどの遅れとなります。
 球根生産者の選別から、日本のお客様に納品できるまで、最短でも2カ月以上かかりますから、現在、収穫 又は 輸出会社に入荷していない大半の品種は、年内の納品が不可能になりました。早期入荷できるよう対応していますが、
  LAは1月上中旬〜 (収穫自体の遅い品種は更に遅れます)
  オリエンタルのターボ球も、1月中下旬〜
  オリエンタル・OTは、(恐らく)2月上旬以降の納品スタート
 というのが、早期入荷のスケジュールとなります。年末から1月までの植付けは、前年オ産(LA/スカシ)やSH産での対応範囲とご理解いただき、来年以降のご計画にも合せて考慮いただけたらと思います。



B 球根生産体系も変わってきています。
近年、多くの販売球が東・南オランダで生産されるようになり、地域ごとの委託生産者の重要度が高まってきました。品質管理を追求する中で、これまでのように、「1委託生産者−複数オーナー生産者」型ばかりでなく、「1−1」の形も注目されています。私が見た中での両者の特徴としては…
「複数オーナー型」
人気・実績のある委託生産者は、規模が大きく設備投資が良いため、新しい機械や倉庫、進んだ技術の導入が早い。(右写真は3段式アクアグレーダ−、畑洗浄段階で荒選別が済んでいる)
又、複数生産者のロットを扱うため、バイラスロットの管理に関する意識(特にPVに対して)も高まり、ロットごとの品質情報も、オーナー生産者間でオープンに扱われる事が多いため、品質低下へのけん制になる。
「1オーナー型」
オーナー生産者自身の栽培管理能力や、ロット品質意識が重要で、資本も意向も強く反映される。この場合の委託生産者にとって、球根生産は副業の場合が多く、設備もさまざま。授受両者の繋がりが深いので、将来的には選別作業まで生産地でしてしまえば、コスト削減につながる可能性もあるのでは!?
他の生産者との接点が少ないので、独自のバイラスコントロールがしやすい。




C プラムバイラス(PV)への取り組み

イライザーテストが普及し、多くの球根生産者が9月の圃場での葉サンプルを使って検査を受けました。輸出会社も検査結果の多くを知ることになり、つまりは、バイラスロットは買ってもらえないという状況になってきました。

 商売上の選別の影響は何より大きく、今回訪問した球根生産者も以下のような具体的な対策を始めていました。
 ・球根消毒を行わない。消毒液による感染が懸念されているため(本当か?)。
  (11オ産の腐敗事故は、地温が高い時期(11月前半)に早掘りされたためと言われていますが、今年は既に何度か霜も発生し、現在 昨年11月下旬並みに気温・地温が下がっています。又、輸出会社では必ず消毒します。)
 ・球根洗浄機でリサイクル水を使わない。又は、洗浄機の最終部分の水を新水にして洗い流す。消毒と同様の懸念があるため。
 ・感染ロットは堀取りや選別順を後回しにする。
 ・感染ロットの洗浄・選別後は、毎回、水または消毒で機械の洗浄を行う。
  (以前なら、シーズンの最後にだけやっていた作業)
 ・母球・種球のバイラス検査は、リン片による検査を再度行う。


霧状の消毒を吹き付ける機械 球根保管箱(ビンと呼ぶ)ごとの消毒機
  いずれも、消毒液を循環しないためロット間(球根間)の接触がない
 かなり神経質な感じもしますが、一部の輸出会社でも同様の対応がされており、オランダ全体でバイラス撲滅・拡散阻止に向けた体制が動きはじめました。
 反応の良い生産者は12年の植付け前から感染ロットの種球を廃棄しており(1000万円以上の損失という人もいた)、多くの生産者も今年の検査結果を踏まえ、13年から感染ロットを廃棄することになるでしょう。
 弊社では、輸出会社からバイラス汚染が高いとの報告を受けた品種・ロットは、原則取扱わない方向で、これまでにストライカー、カルーソ、タリスカー、ガランサ、アイスべアーなど、品種として取扱いを断念しました。関係のお客様にはご迷惑をお掛け致しました。
 路地で作っている球根ですから、バイラスがゼロというのもまた言えませんが、「気候によって症状がでなきゃいい」という考え方は、最終的に消費者・花屋での百合の価値や、切花生産者としての評価を下げてしまうと懸念します。
 又、PVについて、葉のイライザーによる%は、今のところ参考程度と考えるのが賢明と私は思います。
(現在、研究機関と輸出会社の協力で、イライザーにおける正しいサンプルの取り方や、精度について検証実験を続けています。)
 皆様にはご理解を頂き、オランダ人の苦悩の改革を、前向きに見守ってほしいと思っています。




D 弊社テストハウスが見頃を迎えます。

酷暑試験に続き、オランダ産抑制試験と、SH産の生育試験を行っており、LAの開花に合せて11月10日には一般公開 “秋植え球根バザール”が開催されます。(チューリップの球根も売っています!)
ハウス視察も随時ご案内致しておりますので、詳しくはお問合わせ下さい。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。