株式会社中村農園

レポート・球根情報



南半球出張報告(2006/7/14)

中村 慶吾

平素は格別のお引き立てを受け賜り、誠にありがとうございます。

6月25日~7月6日まで、南半球の球根生産地であるニュージーランドとチリにて、 収穫後の球根や倉庫での作業、また これから収穫される品種の状態などを調査して 参りましたのでご報告申し上げます。

1.ニュージーランドとチリの状況
●ニュージーランド (6月25~30日訪問)

バンザンテン社がメインではありますが、一般品種においてはデヨン社、バッカー社が全体への影響を持ちます。

今年の気候は、夏場が涼しくやや曇天もあり、秋は4月までがやや暖かく、5月中旬ころから温度が下がり、この頃からフロストが入って畑の枯れ方が進みました。6月に入りさらに温度が下がり、中旬にはラカイヤ地区で50年ぶりくらいの記録的な積雪となりました。

朝起きると外は真っ白、30cm以上の雪が積もり、その重さで木造の電信柱が倒れ全域でおよそ4-5日の停電となり、地区によっては復旧に2週間ほどかかったそうです。雪は数日で溶けましたが、その後も寒波が続き、訪問時の最低気温が-5℃で、夜間には畑の地表数cmが凍る状態でした。フロスト(霜)による影響を心配しましたが、朝日が昇れば数時間で溶ける程度で、球根のある深さまでは到達していませんでした。南島南部のゴア地区では雪は降りませんでしたが、同様に気温が下がっていました。仮にフロストが深くても、収穫が不可能になるだけで球根品質に直接影響はないとのことですが、凍結が去った後の温度上昇による発芽の危険性を注意深く見守る必要があります。

雪による収穫作業の中断はありましたが、6月下旬段階で半分近くが収穫され、現在は収穫後期に入っており、作業は順調のようです。

芽の状態は例年に比べてやや大きく、十分に準備が出来ている状態です。

球根肥大は全般には平年並です(去年は良)。ただし、前年のリン片畑での生育不良があったシーラ、ジャスティナで肥大不足となっ ており、その他の品種についても肥大が良い年ではないので、追加で出てくる大球はあまりないと予想されます。

各社の状況

バンザンテン社:選別ラインの増強と作業効率向上のための配置整備と、委託生産者による生産地と収穫作業の分担で、 面積増加への対応を可能にしている。

バッカー社:昨年の冷凍庫増設に続き、来年度に向けてさらに冷凍庫を増設予定。

サザンフローラ社:目だった変更点なし。

 

●チリ (7月1~6日訪問)

総生産面積が100haを超える、ソネ社、サザンバルブ社および、中型規模のサンハーベスト社、チリボーレン社、サン&ブリーズ社、ピガ社を訪問しました。

今年の気候は、夏の天気は良かったのですが気温は高くなく、秋は3月が平年よりやや気温が低く、4-5月は平年並、収穫時期に入る6月は平年よりもやや暖かく、雨も少なめで収穫作業はかなり順調に行えています。

今年の芽形成は、例年よりも1週間~10日早く進んでおり、全生産者に共通して、収穫が昨年よりも早く始められました。品種ごとの芽を見ながら収穫のスケジュールが出来ており、当社が5年近く行ってきた芽形成調査の普及が その役にたってくれており嬉しく感じました。7月上旬現在で、概ね80%の収穫が済み、シーズン終盤に入っています。

肥大についてはやや地域差がありますが、ニュージーランド同様に 平年並です(去年はソルボンヌを除き、やや良)。

 

各社の状況

ソネ社:大型の収穫機及び、作業効率の良い洗浄機を導入し、機械化によって中期的に作業員の人数削減を行う方針。

サザンバルブ社:今年から2つの委託生産者で産地及び作業分散がされている。倉庫面積は2倍近くになり、冷凍庫も増設されている。

サンハーベスト社:冷凍庫の増設がされた。昨年の結果を踏まえて、収穫時期の変更があった。

チリボーレン社:倉庫と冷凍庫の増設がされ、取引のあるオランダの会社が扱う、他の生産社の球根も保管する。

サン&ブリーズ社:目だった変更点なし。

 

2.現地調査を終えて

今回も、日本へ輸出を行う 南半球の全生産者を訪問し、総計450haを超える全ての圃場を、詳しく調査して参りました。特に、我々が輸入を予定している品種につきましては、収穫済み球根のチェック及び、圃場での試し掘りを行い、実際の球根の状態を調査することができました。当社はここ数年 全生産地に年に複数回訪問し、調査に基づいた詳細なデータを持っており、これは世界のユリ球根に携わる会社の中でもユニークな存在のようで、帰国後 多くの会社から状況報告を求められました。先日、オランダの某社が当社を訪問し、生産地で起きている問題点を指摘したところ、その会社自身が把握していなかった内容であったため、その場でオランダの本社に連絡を取り、該当球根の再調査と処分の指示が出るということがありました。

生産地に実際に行ってみると、良い点ばかりでなく様々な問題も発見します。生産地や取引会社名は公表できませんが、水害、フロスト、球根の腐敗、ネダニ、下根不足、軟弱球、発芽球等々がありました。当社としましては、これらの球根の引き取りを拒否し、取り扱う球根全体の品質向上・安定化を続けています。

また、球根の肥大(収量)につきましても、多くの畑で試し掘りを行うことで、各産地・品種の状況をつかむ事が出来ました。これらの情報を元に、欠品予測と起きた場合の代替品の確保を迅速に行い、皆様の計画生産に支障をかけないよう努力致しますが、何分個々の品種毎の生産量はオランダに比べて小さく、供給が不安定であることもご理解をいただきたいと思います。

3.輸入球数の考察

南半球産での生産はほぼ全てがオリエンタルで、輸入球数は昨年の2000万球から06年産は2300万球程度(15%増)になると予想されています。オランダから輸入される球数が約1億4500万球で、内 オリエンタルの球数は凡そ9000万球、南半球産のシェアは1/4弱となります。大雑把に考えると、オランダ産による主な切花出荷は5~1月の9ヶ月間(約1000万球/月)、南半球産は1~5月の5ヶ月間(約460万球/月)というのが現状です。

直近一年間の百合切花の相場展開を振り返ると、冬~春にかけて安定、6月中旬以降は大変厳しい状況となっており、南半球産球根の貢献ぶりが目立っています。しかしながら、一方で燃料代高騰等による高コスト生産時期にあたり、球根品質の重要性を再確認すると共に、責任の重さを痛感しています。

バンザンテン社
アクティバの球根
Aktiva
カサブランカ
の球根
Casa Blanca
カサブランカ
の畑
Casa Blanca
コンスタンタ
の球根
Constanta
シベリアの球根
Siberia
ソルボンヌの球根
Sorbonne
ソルボンヌの畑
Sorbonne
ビビアナの畑
Viviana
マルコポーロ
の球根
MarcoPolo
遠くの山
SnowMountain
in far
収穫機
Harvesting
圃場風景
Field

 

バッカー社
シベリアの球根
Siberia
ロビナのリン片
Robina
Scaling
リアルトの球根
Rialto
ルレーブの畑
Le Reve
選別ライン
Grading Line

 

サザンフローラ社
カサブランカの

Casa Blanca
カサブランカの畑
Casa Blanca
シベリアの畑
Siberia
ソルボンヌの畑
Sorbonne
マルコポーロ
の芽
MarcoPolo
チリ Chile
ソネ社
シベリアの球根
Siberia
シベリアの畑
Siberia
ソルボンヌの球根
Sorbonne
ソルボンヌの畑
Sorbonne
ティバーの球根
Tiber
パッキングライン
Packing Line
マニサの球根
Manissa
メデューサの畑
Medusa
収穫風景
Harvesting
畑洗浄施設
Field Washing
サンハーベスト社
コルドバの芽
Cordoba
サッポロの球根
Sapporo
ゾディアック
の球根
Zodiac
ゾディアック
の畑
Zodiac
重量選別機
Weight
Grading

 

サザンバルブ社
カサブランカ
の球根
Casa Blanca
シベリアの芽
Siberia
シベリアの球
Siberia
シベリアの畑
Siberia
ソルボンヌの畑
Sorbonne
ノバゼンブラ
の球根
Nova Zembla
マルコポーロ
の球根
Marco Polo
リアルトの球根
Rialto
ローラ
選別ライン
Grading Line
新型
パッキング機
New Packing
サン&ブリーズ社
ウィルケアルベルティ
の球根
Willke Alberti
ウィルケアルベルティ
の畑
Willke Alberti
ロビナの球根
Robina
収穫風景
Harvesting