お客様 各位
オランダ出張報告
平成28年11月30日
株式会社中村農園
中村光輝
私は11月15日から23日にかけてオランダにて球根生産会社および圃場を視察し、現地の動向や2016年産の球根について調査して参りましたので、以下にとりまとめてご報告いたします。
【春の雨、初夏の長雨、秋の乾燥】 (ページ最下部 図および表参照)
今年は3月の定植時期、雨が多く定植遅れがありました。その後も雨が続き、4月10日頃までは気温が低く、初期生育が遅れる原因となりました。中でもLA・スカシはオリエンタルなどと比べて生育期間が短いために、地上への発芽が遅かった品種は肥大が悪く、特に東オランダでは影響が多品種に渡り出ています。
その後はすでにご報告の通り、南オランダでは6月に大雨・雹に見舞われました。特に南オランダの東部は収穫量への影響が大きいと言われています。当初、水没したオリエンタル・OTの被害面積について多くが語られましたが、その陰では東オランダを含め長雨によりボトリチス予防の消毒ができず(効かず)、加えて、初夏の寒さによりボトが入り、地上部が枯れてしまった品種がありました。LAなどでは種玉からほとんど肥大せずに終わった品種がありました。
一方、夏は日照時間が長く、適度に雨もあり、球根の充実にとって良好な気候となりました。その後、例年であれば、秋(9月)から雨が降ったり止んだりを繰り返すため、生産者の中には潅水を控える人が多くいます。しかし、今年は極端に雨がなく、平均気温も高くなったため(観測史上初めて9月に30度超を記録)、雨を待っていた生産者・圃場では、秋の肥大を抑えてしまうところがありました。一方で、十分に潅水を行った圃場では生育期間が長くなり、春の遅れを取り戻すことができました。
今年は南北の地域差だけではなく、海沿い(西部)か内陸部(東部)かにより例年よりも肥大への影響が大きく出ています。
〇海沿い(西部) (地図参照・実線)
アムステルダム北東部の湾岸に位置するLAの生産地NOP地区では、主要品種で16-18や18-20は少ないものの、14-16サイズなどの結果には満足しているとのことです。また、オリエンタル・OTも南オランダ西部のブラーボンドでは、定植の遅延もなく夏の良好な天候によって肥大が進み、2年栽培球などを中心に大球を見ることができました。
〇内陸部(東部) (地図参照・点線)
しかしながら、ドイツ国境に近い東オランダや南オランダ東部のリンブルグでは、今年は天候に恵まれず肥大不足となり、私の調査でもオリエンタルで20cm以上の大球を見ることはほとんどありませんでした。
弊社では上記のような地域や栽培期間の差によるリスクを軽減するため、フランス産を含め特定の地域・会社に集中することは避け、幅広く取り扱うことを心掛けています。しかし、オリエンタル・OTは南オランダでの「水害による球数の減少」と東部の「肥大不足」により、販売球が想定よりも少ないと見込んでいる輸出会社が多くいます。特に、生産地や生産者が限られている品種などがオランダの東部で作られている場合は、他産地で補うことができず欠品となってしまいます。現在、オリエンタル・OTの収穫結果を待っている状況ですが、収穫結果が出る前に、ご計画に沿って球根を手配されているか、今一度ご確認のほどお願い致します。
【今年の球根は力強い!?】 (写真参照)
今年の球根は力強く、傷も少ない綺麗な球根が多く、重みのあるものが多く見られました。また、球根内の茎部が昨年よりも太く、充実した球根に仕上がっていると思います。圃場を案内してくれた輸出会社の担当者も、「今年は夏場の太陽を浴びて球根が充実していると思う。」という人ばかりでした。
私の現地調査では球根の大きさを1球1球メジャーで計り、鱗片を剥いて芽の大きさを細かく計っています。こうした地道な計測は現地の担当者にとっても興味深いデータとして受け取られており、「今、何センチだった?昨年と何ミリメートル違った?実際計ると良く分かる。」などと結果を一緒に考えてくれます。こうした現地・圃場でのコミュニケーションは私や輸出会社の担当者にとっても非常に良い信頼関係につながっていると思います。
今後も皆様にお届けする調査結果や情報提供について、実際に現地を訪れ、ひとつひとつ計測を積み重ね、その結果と現地の情報をもとにご報告して参ります。
【OT生産と冷静な判断】
今回も多くの球根生産者との意見交換の場を用意してもらいました。
昨今、多くの球根生産者は生産効率の良いOTの導入を進めています。意見交換の場でも「まだ、日本はOTを使わないの?」、と言われることが多くあります。
その際、私は「現在、流通している多くのOTは“リン付きが極端に低い品種”が多いからです。」、「今後生産する品種のリン付きはどうですか?」と行く先々でリン付きの話を行いました。また、OTでもリン付きのいい品種は日本でも需要があり、抵抗なく使われ始めていることを伝えると、“確かに”と我に返る人がいました。
一方で、私の意見に共感し「OTでも14-16で3リン以上付き、国や使用時期により18-20以上も使える品種を選んでいる。」と言う生産者が一人いました。私はオリエンタルの中にも“極端にリン付きの悪い品種”はすでに球根生産が終わった品種がたくさんあると思います。輸出会社の担当者も、リン付きが良ければ 小球を好む国から リン付きの良い大球を好む国まで、品種を一緒に育てていくことができるという人がいました。
今回もシベリアの生産を止めると言う生産者がいました。加えて、育種会社ではオリエンタルの開発を止めたところもあります。年々、OTの割合が増えていくことが想定されることから、柔軟に対応していく必要があると考えています。
今後も皆様から頂いた貴重なご意見を参考にさせていただき、現地での意見交換の場で伝えることで、より良い関係を継続していけるよう、頑張って参ります。
【おまけ】
今回のオランダ訪問に同行した岡本は弊社ホームページの“ブログ”を書いています。訪問中も、“現地での生活”を日々更新しましたので、お時間許すときにでもご覧いただければ幸いです。http://www.nfb.co.jp/(ホームページ)http://nfblily.blogspot.jp/(ブログ直通)