中村慶吾
平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
3月下旬(3/19~3/26)にニュージーランドの全生産者を訪問し、 調査を行って参りましたのでご報告いたします。
1 ニュージーランドの気候
植付けが行われる10月頃に、熱く乾いた風が吹き続いており、そのため初期成育が十分でなく、 全般に草丈が低い。11-1月は例年並の良い天候が続き、生育は順調でした。
1月後半から2月は(特に北島南部で)雨量が多かったですが、生産のある地方では 適度な雨量でした。この間曇りが多かったため、日照量はやや少なかったようです。
3月はほぼ平年並み(ただし、秋への移り変わりで時折急に温度が下がることがあります)。
畑の葉はまだまだ緑が濃く、今後4月の気温と雨量によって熟度が上がってくるのを 待つという状態です。
2 生産圃場と球根のようす
ニュージーランドの生産総面積はおよそ105ha(去年は約110ha)で全体としてはほぼ変わらず、 品種構成は需要の高い(人気のある)品種にやや集中してきている感じがあります。
バンザンテン社の新品種、サナ、トップホワイトや、リアルト、ウィルケアルベティ等、 冬の切花生産に適している、新しい品種の生産(リン片畑)も始まりました。
去年と比べると、全般に草丈がやや低いですが、その分 日照が下の葉まで当り、 夏場の極端な高温と乾燥も少なく、日焼けのない健全な生育をしています。
球根の試し掘りをしたところ、肥大は平年並。但し去年は肥大が良かった年なので、 比較するとやや小さいとも言えます。
球根内の芽は、去年同時期は殆んど見られない状態でしたが、今年は多くの品種で芽長が 1.5cmくらいあり、茎部も1mm程度上がっているのが確認できました。 クライストチャーチ南西のラカイヤ地方(バンザンテン社、バッカー社の生産地)では、 2月中旬から地温が15℃を下回っており(去年と比べ半月ほど早く)、芽形成のスタートが 早かったと言えます。
3 各社の状況
- バンザンテン社(南島:クライストチャーチ南西のラカイヤ)、約30ha
バイラス汚染に対しての意識が高く、初期から定期的に防虫剤散布がされ、畑に雑草の1本もないような、行き届いた管理という印象。
新品種のサナやトップホワイトのリン片畑もあり、アクティバ、ティアラ等の品種から、シーラ、ジャスティナ、コンスタンタ、ビビアナ等、新しい品種への移行も進んでいる。 (ニュージーランド全般の状態ですが)畑の草丈がやや低く、品種によっては球根肥大が心配なものがある。
2年栽培球(弊社LF球)は下根が良く、球根は硬く、重みがあり、生育良い。芽形成も通常球より遅く、長期保存に適した球根に仕上がりそう。 - バッカー社(南島:同じくラカイヤ)、約22ha
植付け前の種球や 生育中も2回、葉のイライザーテストを行い、バンザンテン社同様、バイラス汚染に気をつけている。
球根は硬く、下根も概ね良好で、印象は良い。肥大も適当。
シベリア、カサブランカ、ルレーブ、マルコポーロなどの一般品種とともに、今年からリアルトのリン片畑もある。 - サザンフローラ社(南島南方のゴア)、約30ha
去年は掘り取り期に球根洗浄の許容量が不足し、結果 掘り取り遅れによる発芽事故を発生させた。今年は畑での球根洗浄能力を増強し、スムーズな収穫~出荷を期待できる。
今年、最も南の生産地となり、気候は穏やか、土質は他の生産地に比べて重いが、水はけが良く、生育は良好で下根も長く伸びている。
球根は硬く、肥大は例年並かやや良いくらい。 - チューリップインターナショナル社(南島南方のタパヌイ)、約7ha
やや山間部の川沿いの圃場で、オランダ南部に似たような黒っぽい砂地で水はけが良い。
バイラス汚染のないきれいな球根で、下根の状態も良いが、やや肥大が遅れている。
丁度良い地温帯に入っているので、新芽の形成も進んでいて、今後肥大は進むと思われる。 去年は選別・パッキングが悪かったが、今年は収穫期にオランダから監視役を駐在させる。 - キウイバルブ社(旧ホップマン社)(北島南東部のネイピア)、約13ha
ワインやカボチャ、リンゴ等の生産を行っている会社からなかなか立派な施設、 及び資本の協力を得て、新天地で球根生産を行っている。ネイピアは果物の生産が盛んな地方で、 土質はやや土っぽい砂で底には石ころの層があり、水はけが非常に良い。夏も高温すぎず、 球根生産にも(以前のオークランド郊外よりもずっと)向いている気候。下根もしっかりしていて、 球根は概ね良くできているので、収穫後 新しい倉庫でも安定した処理がされることを 期待している。
バンザンテン社 (ラカイヤ)
カサブランカLF シーラリン片 スプレー用の道 ソルボンヌの球と芽 ソルボンヌ畑 ティアラLF ビビアンア片 畑 畑での洗浄ライン
バッカー社 (ラカイヤ)1年半栽培の畑 アクティバ畑 シベリア球根 シベリア畑 スケール畑 マルコポーロ畑 ルレーブ球根
サザンフローラ社 (ゴア)カサブランカリン片球 シベリア畑 ティバー畑 マルコポーロ畑 ルレーブ球根 畑
チューリップインターナショナル社 (タパヌイ)カサブランカ球 カサブランカ畑 シベリア球 スプレー用の道 ティバー葉 リン片畑 畑右 畑左
キウイバルブ社(ネイピア)カサブランカ球根 シベリア球根 ティバー畑 ネイピアの町(1部分) ムスカデット 周辺のブドウ畑 土質 畑