中村農園レポート:2004年6月16日
中村 慶吾
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
6月初めに、南半球の球根生産地であるチリで、収穫直前(一部収穫スタート)の畑や球根の状態、また 生産会社の動向などを調査して参りましたのでご報告申し上げます。
1.チリの気候
植付けが行われた春(10月頃から)は曇りが多く涼しかった。夏(1-2月)に入ってからの天候は良く、気温は例年並か去年よりも高いところが多く、ユリは好調に生育し、3月頃には球根肥大が進んでいることが確認された品種もありました。4月に入って雨が多く、後半から徐々に気温が下がり始め、5月には氷点下にまで下がった日もあり、例年よりやや寒い秋となっています。
2.生産圃場と球根の様子
畑に緑は残っておらず、平均的には、葉が半分くらい落ちている状態です。4月に雨が多かったのですが、消毒がきちんとされていたようで、それによるボトは見られません。
早い品種は葉が全て落ち、古茎が抜け始めており、収穫の予定と地上部の枯れ方は概ねバランスが取れています(生産が始まった数年前に比べれば、大きな進歩です)。
天候にも恵まれ、全体に球根肥大は良い年となっていますが、各生産者とも緻密な植付け密度の調整ができていて、極端に太りすぎるものは多くなく、適当なサイズで充実した球根という印象です。
3月中旬から4月末まで地温の下がり方がゆっくりで、その間 球根内の芽形成は進んだようです。今回の調査で、去年よりも芽は大きく、茎部も十分に上がってきているのがわかりました。芽の準備は出来ているので、日本で定植後、比較的早く、良い芽が出てくるものと推測できます。
3.各生産会社
●ソネ社 生産面積約90ha バルディビア
チリ最大の生産者で、一般的な品種(ソルボンヌ、シベリア、カサブランカ、ティバー、シンプロン、マルコポーロなど)とともにオランダのフレッタ-社(育種会社)委託分の新品種(バルパライソ、マニサ、リアルト、カルボニアなど)も生産している。
十分に広かった倉庫をさらに拡張し、選別から輸出用洗浄、パッキングまでスムーズな作業が可能となった。
植付け密度が良く調整されていて、以前よりも球根サイズのそろいが良く、力のありそうな球形になってきている。
収穫機に改良が加えられ、去年よりも大幅に掘り取り能力が向上し、適当な熟度になった品種から適宜収穫することが可能となった。
●サザンバルブ社 生産面積約60ha ピュエウエ
オランダのファンデンボス社委託分の一般品種(ルレーブ、シベリア、ソルボンヌ、マルコポーロなど)が多く、ついでオランダの切花生産者の品種も委託生産している。
14/16-16/18をメインに生産が行われていたが、今年から植付け密度をやや広めて、大球の割合を増やした。
イエローウィンの生産があり、生育は予想以上に良いようだ。
●サンハーベスト社 (旧リカライエン社) 生産面積約12ha ロスアンへルス
主にオランダのサンデ社の委託で、ソルボンヌやナイロビ、コルドバ、ゾディアックなどの生産がある。去年までのオソルノから移動し、新天地での生産を始めた。ロスアンへルスはチリの生産地の中では最も北に位置し、春から夏にかけてより温暖な気候となる。しかし、秋に入ってからの気温の下がりは早く、訪問時、畑の枯れ方は他生産地とほぼ同じ状態で、収穫も同時期となる。
●ファンチューリップ社 生産面積約20ha オソルノ
オランダのバンザンテン品種を委託生産している。アクティバ、ティアラ、フランシアなどのほかに、コンスタンタの生産も始まっている。
●ワーゲナー社 生産面積約12ha
オソルノから数十キロ南に位置し、気温は少し低い程度。こげ茶色の柔らかい土地が多く、球根の状態も良さそうだ。マークリリーの品種(ムスカデット、カロラインテンセンなど)が多く、今年からロビナの生産も始まった。
ソネ社
ソネ社倉庫(左奥が拡張部) | タラゴナ球根 すごい |
ティバー球根 | 広大な畑 |
サザンバルブ社
イエローウィン球根 | シベリア畑 |
ソルボンヌ畑 | 収穫中 |
サンハーベスト社(旧リカライエン社)
ソルボンヌ球と芽 | ソルボンヌ球根 |
ソルボンヌ畑 潅水設備は当然 | 畑の中に岩がポツン |
バンチューリップ社
アクティバ畑 | コンスタンタ球根 |
フランシア球根 | 畑概観 |
ワーゲナー社
ソルボンヌ畑 | ロビナ球根 |