中村農園レポート:2005年7月25日
中村慶吾
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
7月中旬に、南半球の球根生産地 チリにて、収穫後の球根や倉庫での作業、 また これから収穫される品種の状態などを調査して参りましたのでご報告申し上げます。
1.チリの気候と収穫
植付けが行われた9.10月から初期成育段階の12月までは、平年並かやや暖かい気候となり、 摘蕾時期までの生育は順調に進みました。
1月から気候が変わり、例年よりも気温が低く推移したため、雨は少ないのですが天候も 良くなかった印象があります。2月に1週間だけ瞬間的に気温が上昇しましたが、 それ以降の2-4月も全般に気温は低めで、4月下旬にはさらに下がり、 地域によっては早いフロスト(霜)が起きました。 全体として、雨が少なく、 寒く乾いた秋だったと言えます。
5月に入ると雨が多く降り、例年の倍くらいの降水量になります。この雨は6月中旬まで続き、 収穫のスタートは2週間ほど遅れました。
6月中旬以降はパラパラとした雨はありますが、収穫は順調に進み、7月中旬 訪問時までに凡そ65-70%の収穫が済んでいました。(生産者により状況は多少異なりますが)、 今後ソルボンヌ・シベリア・カサブランカなど主要な品種が収穫され、 7月内に全ての収穫作業が終了する予定です。
2.球根の状態
本年1月初めにチリを訪問した際には、前半の気候に恵まれ、 いい収穫になると期待しておりましたが、その時期を境に全く逆の気候となってしまいました。
夏が涼しく、収穫期に雨が多いという点では、先にご報告いたしましたニュージーランドと 似ていますが、決定的に違うのは夏に雨が少なかった(=日照はあった)ということ。そして、 秋に温度が低く推移したため、終盤になって急激に球根が太った感じはありません。
球根肥大については、上記のような環境のため、肥大の良かった 去年に比べると劣っています。 収穫のスタートが遅れたこともあり、ようやく前半に 収穫された品種についての結果が出てきている状態です。一部品種の欠品が報告されていますが、 それらの品種については、気候による肥大不足だけではなく、早い段階で太り過ぎを恐れ、 地上部を刈り込み 生育を止めてしまったもの(イエローウィン)や、湿った環境での収穫により 下根が切れてしまい、予定していた球数を出せなかった(ロンバルディア)など、 人為的な要因で不足となったものもあります。
球根内の芽については、収穫期の雨で地温がやや高く、発芽の心配がされていましたが、 実際にはその少し手前の状態です。しかし、大きいことには変わりなく、速やかに収穫と作業がされ、 低温に落とし込む必要があります。
秋の気温が低く推移しましたが、雨により冬の地温も思ったほど下がっていないため、 球根自体の充実度はなんとも言えません。植付けや管理の改善で、 以前に比べて球根形状はよくなっており、芽形成も進んでいます。こうした点においては、 日本で植え付けてから比較的太い茎がでてきて、 リン付きも例年並以上となる可能性を持っています。 秋に地中での冷蔵が効いていることや、 芽の大きさから、早めの植付けに適している球根と考えられます。
3.各社の状況
ソネ社(100ha): |
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ここ数年は安定した作付け面積となっており、収穫やその後の作業についてもより落ち着きをもって行えています。畑の作業などを見ても、機械化と人数をかけた人力作業がバランスよく構成されています。パッキングの精度はチリでは1番良いと思います。4月末のフロストの影響で例年よりも地上部の枯れ方が早く、球根の充実度は増していますが、球根の肥大不足が心配される品種がいくつかあります。 | ||
サザンバルブ社(70ha): |
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例年に比べて降水量が多かった地域で、地温上昇による発芽を心配し、地上部の枯れを待たずに、2週間ほど早いペースで収穫が行われました。昨年よりも植付け密度を広げたことが幸いしてか、一部品種を除いて、全般には予定通りの肥大となっています。本年はりん片畑の面積も多く、06年の生産面積はソネ社に追いつきそうな勢いです。 |
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サンハーベスト社(15ha): |
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最も北(暖かい方)に位置しながら、地温はオソルノやバルディビアよりも低くなり、地上部の枯れ方はむしろ早い方に部類します。土質が他産地とは異なる砂地(微小の石粒といった感じ)で、収穫の際に擦れて傷がつかないように注意が必要。オランダのオニングス社との関係が深まり、今後は生産面積を増やしていく計画か? |
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ファンチューリップ社(23ha): |
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バンザンテン社の委託分以外に、サザンバルブ社やオランダの球根生産者との提携が大きくなっている。例年、肥料散布が多く、ぶくぶくと肥大した感があったが、本年は追肥を抑えて適度な太りに調整されている。 |
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その他の生産者: |
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チリボーレン社 (10ha)、サン&ブリーズ社 (12ha)、ピガ社 (15ha)など、まだ生産面積は小さく、人海戦術での作業や簡易の機械が目立った。今後安定した球根生産や倉庫作業に向けて、様々な改良がなされていく必要がある。他産地と違った畑の気候や環境、特殊な品種、新たなオランダの会社とのつながりなど、それぞれに特色を持っており今後に期待したい。 |
4.2006年チリ産
オランダ産の販売好調を受け、多くの生産者が来年の作付面積を拡大する見込みです。本年の合計面積(りん片を含む) 凡そ250haから、2006年は320haと予想され、驚きの28%増となるようです。この影響は大きく、ニュージーランド産も含めて 慎重に対応していく必要があります。