株式会社中村農園

レポート・球根情報



「メードインチャイナ(中国産)に関する疑問」(2006/1/23)

今、私達にとって、大変に関心の高い中国の切花事情に付、今月号のオランダ主要誌「フラワーテック」に特集記事がありましたので、ご紹介致します。

㈱中村農園
翻訳:富永朝子

今、中国は近代的な切花生産についてのノウハウが不足している。しかし、彼らは急速に勉強しており、近々、近代的な生産方法を身に付け、ヨーロッパや他の地域においても、消費者に切花を供給する主要国となるであろう。
アーロン・プリール(イスラエル)

世界中の市場は「中国産」のラベルがついた製品であふれかえっている。おもちゃに始まりテレビまで、コンピューターや衣服・電話・家庭用品・農産物・花も。実際、中国産の物がない日常生活はありえないし、市場は世界に広がり、それが安い物という事すら忘れるほどだ。品質も悪くないし、西側市場に中国の物が入って来ると、多くの国で激しい競合に直面している。中国産の同じ物は、欧米産より格段に安い。その理由は良く知られている通り、人的資産は無限で、労働者の資質は、今は西側にひけは取るものの、中国の労働者は訓練され、知性を身につけ、生産的で、覚えが早い。

イスラエルの花きの先駆者であるマックス・ウェイルは、中国の花き産業を調査し、結果をイスラエル花き生産者協会発行の「花世界」に発表した。市場には、実に多くの中国産花があり、オランダの花き農家も、数年の内に、オランダを含むヨーロッパ中の家庭に、中国産の花が見られるようになる事に気付きつつある。オランダの生産者も「何が起こりつつあるのか」「本当にそんな事が起こるのか」「中国産花きが、本当にマーケットに対して脅威になるとしたら、いつ頃なんだ」というような問題について、答えを見出そうとしている。

雲南省の目標は10,000ha
中国における花の主産地は、450万人が居住する昆明のある雲南省だ。50%近くの中国の花は、この地域のハウスや露地で生産されており、2010年までの目標は、10,000haの花生産である。開発計画では、近代技術を伴った大農園を作り,新しい生産の中心地となるよう準備している。

雲南地域の主な産物は、茶・タバコ・米である。しかし、最近は、多くの生産者が、他の今まで作ってきた物を作るより、格段にもうかる花生産へ移行している。更に、雲南の人々は、他の地域の人々に比べて貧困であるという事実に基づき、中央政府は、花分野の発展を支援している。調査では、雲南当局が、この地域を、日本やシンガポール・オーストラリア・タイやその他の東南アジア向けの花輸出の中心にしようと計画しているとも述べられている。従って、ヨーロッパ向け輸出だけに焦点を合わせているのではない。

開発計画
現在、昆明周辺には、3つの花生産の中心地がある。昆明:一般的花生産、雲南南部:熱帯性の花、そして雲南北部:ここの人口は4,500万人で、球根生産。この区別は、気候要因が基になっているが、一年中春のような理想的な気候に恵まれており、花生産の為には理想的である。このことが開発計画に盛り込まれている。又、2020年までに、10,000haからの収穫の40%を輸出しようと考えている。

開発計画は、以下の通りである。2007年までに、8,000haのハウスと露地栽培を成しとげ、2010年までに、10,000haとする。新開発戦略が重要視しているのが、品質である。輸送等を改善し、近代的な生産技術を導入しようとしている。

調査は、輸出に適すための品質問題や輸送問題について、何人かの生産者の見解も述べている。例えば、「今日の段階では、オランダの生産者は、中国の花を恐れる所まで行っていない。」又、国内市場においても、「品質不良の花では満足してもらえないし、生産はごくわずかになってしまう。」とも述べている。ある生産者は言った。「花において、我が中国は、オランダに50年遅れており、その差を20年で埋められたら上出来だ。」他の生産者は言った。「今は輸出用の花の品質も量も不満足だ。しかし、やがて中国は、ヨーロッパの花き取り引きにおいて、競合できるようになるだろう。」

今日の作業形態
現在は、5800haの花生産が、30,000人の農民により行なわれている。平均耕作面積は、0.5エーカー(20アール)位だ。雲南の主要な花はバラ(2,100ha)とカーネーション(1,100ha)である。25,000人の生産者による、品物の品質は確かに低い。しかし、輸出用に適した200の農場もある。全ての生産者は、ノウハウが、この国の花の将来に最も影響がある事を知っており、この課題への取り組みは、1990年からスタートした。大農場は、オランダやイスラエルの専門家の技術協力により、品質を向上した。

調査によれば、1㎡当り100~120本のバラが生産されている。露地栽培が主ではあるが、ドリップ式のかん水施設を備えたようなハウスもたくさんできている。「冷蔵施設はごく少なく、加えて作物の前処理もない。中国の生産者は、オランダでは禁じられている殺虫剤や他の農薬も使用している。」中国からヨーロッパへの花輸出の為の大きな障害は、品質問題と、十分でない輸送のインフラである。

調査は、この地域を訪れたオランダ人専門家の報告に従い、生産コストについて述べている。
■バラ一本当り、1~4ユーロセント(1.4円~5.6円)
■労賃は、生産コストの25%まで(未熟練労働者の賃金は、月に50ユーロ(7,000円)、熟練した人でも100ユーロ(14,000円)
■消毒剤の費用が、全生産コストの40%
■竹にビニールのネットを張るという標準的ハウスの費用が、全生産費の30%
■種苗費は、生産コストの5%だが、それは権利使用料を払うと、もっと高くなる。(注:今は殆んど支払われていない)

KIFA(昆明国際花き市場)
花の取り引きの仕方については、生産者は、花販売会社に供給することもできるし、大農場のオーナーに渡すこともできる。オーナーは斗南の(相対)卸市場かKIFA市場へ、その花を供給する。KIFA市場(昆明国際花き市場)は、オランダのせりシステムを基に運営されている。VBAはKIFAに5%出資しているが、調査によれば、市場の成績は芳ばしくない。中国政府により、(相対)卸市場の近くに創設され、21時から稼動するのだが、設立2年後の取扱量は、当初予想日量100万本に対し、50万本にとどまっている。

市場は、しばしば運営の仕方を変更したことや、(相対)卸市場との競合の結果、損失を出している。当初生産量の25%を取り扱う計画だったものが、ちょうど10%しか扱えていない。生産者は市場に4%の手数料を支払う。このような事を心に留めながら、VBAは今、KIFA市場が今後組織を持続できるか否かを考え始めている。

KIFA市場(昆明国際花き市場)は
オランダのせりシステムを基に運営されている
斗南の(相対)卸市場

彼らの大望についての確信
調査のまとめとして、ウェイルはこう結論づけている。中国は努力し、雲南地域の生産は数年の内に発展し、世界的な花き取引の主要なプレイヤーとなるだろう。人的資源や理想的な気候状況を考えると、きっとそう言えるだろう。しかしながら、ばく大な数の小規模農家による花の品質レベルや、流通面においては、ヨーロッパ標準にまだ達していない。しかし、中国の花き生産者は、5~10年の内に様相は一変すると信じている。