株式会社中村農園

レポート・球根情報



チリ出張報告(2012/7/2)

中村 慶吾

 平素は格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。
6月25日から30日まで、南米チリに出張し、収穫状況や球根の状況、各社の情勢等を調査してまいりましたので、下記にご報告致します。

① 調査結果をオープンにご紹介!
南半球産の正しい理解や、1-2月植えに向けての保管についてなど、これら情報が関係各社のお役に立ち、球根の供給ならびに、日本の切花生産の安定につながれば光栄です。

今回調査しました平均値を、昨年の調査サイズに合わせた、芽形成調査結果です。
夏の気候は、気温が高く日照に恵まれていたため、茎幅が太く、充実した印象を受けます。
秋が暖かく4月までマイルドな天候だったため、葉枚数の形成が進んだと思われます。
また、球根肥大も良くなっています。(概ね肥大予想通りのようです)

表の下部は、今年のCH産と昨年のNZ産を比較したものです。
リン片数、茎幅や葉枚数を見ると、NZ2011年産とほぼ同じ水準であることが分かります。
逆に芽長、茎長が低い分、長期保管性にもよい状態となっています。ちなみに2011年NZ産は肥大の悪い年でした。
年々感じる事ですが、CH産とNZ産の差がなくなってきました。全般にCH産の植付け時期が早められ生育期間が延びたことや、1年産、2年産、裸リン片からの種球生産など、生産体系が同じになったことも関係しているのではないでしょうか。

② バイラス管理の意識と改革はオランダ以上!?

南半球産の良いところは、球根生産者が自分でパッキングを行い、自社の名前つき(ラベル)で輸出をしている事にあります。隠れ蓑がない分、自社の品質イメー>ジと人気が直結している事をよく理解しています。

ソネ社は、品質改善のため導入したオランダからの母球の一部に感染がみられるなど、紆余曲折ありますが、現在それらの排除を進めています。本年産の中には、感染のため収穫をしないものもあり、実際の痛みを伴うものですが、ソネ社のアレックス氏は「指を切る方が、手首を切るよりましだ」と言います。 自社のティシューラボからのロットはクリーンなため、そのメリットを生かし、既存の生産ラインとは全く隔離した中で、今後に向けてのストック作りが進められています。

サザンバルブ社は本年収穫の種球のうち、汚染ロットを廃棄しています。13年産の植付けをクリーンロットのみにするという決断はすばらしいですが、改革の痛みは大きく、13年産は減産となり、現在5つある生産エリアのうち2つが停止となります。

サンハーベスト社は、取引の受託関係が狭かった分、比較的問題ロットが少ない状況にあります。
オランダでも消毒液による感染を心配し、球根洗浄後の消毒をしない生産者が増えていますが(11オ産のカビ腐敗の要因)、サンハーベスト社では新たな方法として、これまでのどぶ漬け式から、スプレー吹き付け式に換えて〔左写真:消毒機(ピンボケですいません…)〕、通過する球根に新しい消毒液をスプレーしています。

(パッキング時の消毒はこれまでと変わりありません)

サン&ブリーズ社も、比較的抱える問題は小さいようですが、今年から既に外部からの種球の導入はしない事とし、全て自社でのリン片 並びに オランダからのティシュー(主に新品種)のみで生産を行います。
又、洗浄後の一次消毒はロットごとに消毒液を作り替える徹底ぶりです。

チリの生産者の品質改善での利点は、豊富な水があり洗浄機の水をリサイクルしなくても良い事や、地方に広大な処女地があるなど、環境的ポテンシャルが高い事です。
これは、NZ、オランダでは考えにくいことです。また、各社が比較的大きな冷凍設備を備えており、選別後、パッキングまで数日以上(比較的長く)球根表面を乾かし、キズの広がりと球根同士の湿った接触を防いでいます。

品質とは話が変わりますが、サザンバルブ生産、ファンデンボス社扱いのパッケージが新しくなりました。
これまでも品質でも評価の高かった同社のロットですが、今年からデザイン一新、感じのいい緑色のパッケージとなりました。
球根も多くのロットを検査しましたが、多リン傾向の品種サイズは大き過ぎが入らないよう選別を抑えてあったり、球根自体の状態や、パッキングもきれいに仕上がっていました。

③ チリはいま
南米チリは経済成長中にあり、ヨーロッパの不況の影響も少なく景気は良いようです。
過去10年を振り返ると、道路や携帯電話などインフラ整備に続き、大型ショッピングモール、カジノなどの発展が進んでいましたが、それも地方まで行きつき、現在発展目覚ましいのはニュータウンだと思います。核家族化が進んでいるのもあってか、広大な土地に立て売り住宅が次々と作られています。(下写真:ロサンヘレ地区郊外)

大きな街の郊外の畑などを買い取り、時に数百の同じ形の家が突如建ち並びます。
こうした新興住宅はコンパクトサイズではありますが、値段もリーズナブルで300-600万円くらい?らしく、若者でもインフレ中のため、銀行からローンも借りやすいようです。
売れた分だけ新たに家が追加されていき、地方都市や田舎の小さな町(村)の周辺に次々と新しい町ができています。

それでは、私は7泊12日の弾丸ツアーの後半戦、ニュージーランドへ向かいます!

                                                         以上