中村 慶吾
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
2009年11月15日~23日、オランダに出張し(主として)オリエンタルの圃場を数多く訪れ、調査して参りましたのでご報告致します。
■温暖化の影響は?
今年のオランダの気候は、シーズンを通して温度が高く、大事な時期に雨が少なかったのが特徴です。
09年オランダ産を考える上で、ポイントになる部分は以下の事柄です。
① シーズンを通じて日照と気温が高い
別紙“2009年オランダ気候グラフ”をご参照いただきますと、植付け期の3~4月以降、11月の現在に至るまで、月間の気温と日照が全て平年値を上回っていることが分かります。(かなり珍しいと思います)
下記の日照時間の表をご覧ください。
日照時間 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 平年値 |
生育全期(4~10月) | 1323 | 1276 | 1303 | 1436 | 1175 |
開花期以降(7~10月) | 720 | 622 | 626 | 742 | 627 |
*平年値(あまり深い意味はありませんが)よりもずっと多く、リン付の良かった 2006年よりもはるかに長いことから、今年の球根は力があると予想できます。
② 9月の乾燥で肥大進まず
秋の9月は、気温が下がってきて球根が大きく太る時期ですが、9月6日以降 雨がほとんど降らず、地域によっては干ばつになりました。そのため9月下旬の輸出会社による調査報告では、肥大は悪いと言われていました。
③ 10月の霜をどう考える
今年は10月14日頃から2~3日ほど霜が入りました(地域によりやや異なる)。
オランダ南部のリンブルグ地方では、マイナス4℃まで下がったとのことで、通常枯れ方が遅い場所ですが、北(北東)部と変わらず畑は茶色く葉も落ち始めており、すでに収穫できる状態にありました(昨年に比べると枯れ方が早いようです)。
通常の年であれば、霜が入った後どんどん気温が下がり、球根肥大はストップすると考えられますが、今年は中旬の霜のあと、逆に気温が上がってきています。今回調査での肥大結果(後半にご紹介)は、一般に言われているよりはやや回復した印象で、霜以降もいくらか肥大が継続していたと考えられます。
④ 高温の収穫期
11月前半は平年並みの気温に下がったように思われましたが、中旬以降、現在に至るまで、8-15℃(平均10℃くらい)の4月末並の高温が続いています。
(天気予報によりますと、今日からやっと温度が下がるようです。)
下記、11月の気温表をご覧ください。
2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 平年値 | |
11月の月間気温 | 9.2 | 6.9 | 6.9 | 9.7 | 6.2 |
腐敗事故 | 多い | 少ない | 少ない | どうなる? |
*2009年は11月25日現在までの数値です。
*平年値と比べると、今年がいかに異常高温であるか、お分りになると思います。
既に11月第2週から主要品種の収穫が始まっています。地温が高いときの収穫は、傷付きやすく腐敗も心配されます。現地で見た収穫後の球根(オリエンタル/OT)の一部で、表面の傷が目立つものがありましたが、腐敗等は見られませんでした。
また、これまでに収穫されているものは特に問題ありませんが、今後このような高温傾向が続くと発芽の心配が出て来ます。
●球根の状態
続いて、現地圃場調査の結果についてご報告いたします。
今年も平年とほぼ同じ時期にオランダを訪問し、各地方(フリースランド、ドレンテ、オブライセル、リンブルグ、ブラーバント)の圃場を回り、試し掘りによる球根チェックを行いました。
① オリエンタル/OTの球根肥大
・一般的には、肥大はやや悪いと言われています。
・オリエンタル/OTの一部収穫結果では (堀り初めの結果は全体像とは異なる場合もありますが…)
ソルボンヌの18-20が欠品(ある生産者では25-50%の欠品予想がされている)
イエローウィンは12-14が欠品で、18-20が予想以上(肥大良すぎ)
など状況はまちまちです。
・当社の調査結果をまとめますと、一般的な品種で平年並み~やや不良、新品種とOT系品種で肥大良いとなっており、全体を平均すると平年並みです(08年産以上、07年産未満)。
地域別では、オブライセル地方(東オランダ)で肥大が悪く、その他はまずまず、 リンブルグ地方(南オランダ)はやや良という印象でした。
一般に言われている通り、圃場により品種により、肥大がずいぶんと違いました。 同じ品種でも、肥大が大きく異なるのは、下記の点が関係していると推定されます。
乾燥時期に十分な潅水ができたか?
・委託生産者などがコスト削減のため十分な潅水をしなかったケース
植付け密度が密植すぎた?
・昨年の不作を受けて、全体的にはやや薄く植えられていますが、密植ぎみの畑で顕著に肥大率が低い。特に大きい種球サイズでその傾向があります。言い換えれば、(売りにくい特大球は作らないよう)マーケット需要に合わせた調整ができているとも言えます。
② 芽形成状況
芽形成調査の平均値を昨年2008年産と比較をすると、下記のようになります。
外リン片 | 内リン片 | 芽長 | 芽幅 | 葉枚数 | 茎長 | 茎幅 |
106% | 106% | 95% | 103% | 102% | 104% | 106% |
見ための芽の大きさはそれほど大きくなく、葉枚数も多くはありませんでした。ただし茎の部分が比較的大きく、太さもあるのが特徴で、ずんぐりした形状は芽形成が進んでいると言えます。太い芽は、ボリューム・リン付が良くなる傾向があります。
③ 球根の外観
畑で掘り起こした球根にも、今年の気候の影響を感じさせる部分がありました。
・二芽がやや多く見られる。
(実際には掘り取りをしてみなければ分かりませんが)、春先や8月の高温などの影響で、多くなった可能性があります。
・フザリウムや根ダニが一部に見られる。
大半の球根は問題がありませんが、温度が高い年の方が出やすいと言われており、特定の圃場またはロットで問題が見られました。
■(弊社としての大胆な)総括
日照量 + 芽形成 - 球根肥大 = 力のある年
と当社は予想します。
■A・LAの肥大し過ぎ
当レポートでは省略しましたが、A・LAは生産面積が大幅に減少、すでに収穫は終わりつつあり、恵まれた気候により肥大しすぎ、12/14や14/16が不足との事です。
以上
シベリアの畑 | シベリアの球根 | クリスタルブランカの畑 | クリスタルブランカの芽 |
カサブランカの球根 | ノバゼンブラの球根 | ソルボンヌの畑 | ソルボンヌの球根 |
ソルボンヌの芽 | シーラの畑 | マルコポーロの畑 | ブーレスカの畑 |
ティバーの畑 | グラシアの球根 | メデューサの芽 | イエローウィンの畑 |
レソトの畑 | ロビナの畑 | ベラドンナの球根 | コンカドールの球根 |
圃場調査風景