株式会社中村農園

レポート・球根情報



ニュージーランド出張報告(2007/1/25)

中村 慶吾

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
1月15~21日に、南半球のゆり球根生産地である ニュージーランド(以下NZ)にて、全ての生産会社を訪問し、全ロットの生育調査を行って参りましたのでご報告いたします。
又、各社訪問時に撮影しました写真画像を当社H.P.に載せておりますので、ぜひご覧下さい。

1.生産面積と委託生産

下記表のように、チリ同様 面積が増加していたNZですが、06から07にかけては30%強の大幅な増加となりました。

2005年 2006年 2007年 前年比
NZ生産面積推移(Ha) 111 126 166 32%増

(リン片圃場含む)

06年NZ産は、販売球生産のある会社がバンザンテン社、サザンフローラ社、バッカー社でしたが、07年産より北島のアイランドバルブ(15ha以上)が加わり4社となりました。

昨年までは、主にオランダの輸出業者による自社生産や契約生産で、面積及び品種構成は比較的安定していました。07年産の生産から大きく変ったのは、オランダの球根生産者(グループ)や、大型切花生産者による委託生産が増えたことです。昨年まではこうした委託による面積増加は主にチリで行われて来ました。冬場のオリエンタル切花生産に、オランダ産球根からSH産へのシフトは日本以外でも(特に大型切花生産者において)目立った動きとなって来ており、NZもそれに対応して面積を拡大しています。

アイランドバルブ社は、オランダの球根生産者2名とNZの会社とで設立されており、彼等の委託生産が主ですが、別の生産者との委託もあります。バンザンテン社、バッカー社は切花生産会社との契約栽培が増加、サザンフローラ社は他社との契約ではありませんが、NZに自社切花生産施設を持っており、年間約220万本(NZ生産のゆり切花の約半数)を既に生産し、自社NZ産球根も使われています。

スターファイター、スターゲザー、メロースター、マスカデット、キャンベラ、コブラ、シベリア、ソルボンヌ、ティバーなどがこうした委託による生産があるものです。

 

2.ニュージーランドの気候と球根生育

作付期から現在まで、NZの気候は例年に比べて涼しく推移しています。NZも南北に長い国で、地形によっても各地の気候は違いますが、参考までに 別紙“2006-07クライストチャーチ気候グラフ”をご覧下さい。

植付けの時期となる10月以降も、南からの冷たい風が吹きつづけ、本年と平年の気温差は広がっていきます。12月にはその差-2.3℃、北島のネイピアでは3℃も平年より低く、全般には04/05年と似た気候です。また、12月は南島を中心に雨が多く、ほとんど潅水の必要がなかったそうです。この涼しい(1月でも最高気温が20℃を下回る)気候は、私達の訪問時まで続いており、1月中旬以降少しずつ平年の夏の姿を取り戻してきています。

圃場の百合を見ますと、生育初期に冷たい風に当たったせいで、特に南方ほど草丈が短くなっています。生産者は摘蕾を機械で行いますが、浅く上部を切り落とし、残った蕾を手で摘み取ることで、必要以上に葉を失うことを防ぎました。また、温度が低いため生育が遅く、摘蕾は例年よりも1週間~10日の遅れとなりました。

これまでの(通常作の)球根肥大は少ないですが、本格的な肥大は摘蕾後のこれからで、現時点で余り悲観的な予想をすることは適当ではありません。しかし、何れにしても今後速やかに気候が回復することを期待しています。又、一方では、昨年は肥大の良かった年で、リン片畑の肥大(今年の種球の大きさ)は良かったですし、2年据置き栽培等もすでに十分な肥大が見られました。

 

3.産地訪問の重要性

今年のように 気温が低く推移した年は、生育にばらつきが出やすく、ロットや種球の経歴による差が見やすくなります。今回NZでの 調査品種・ロット件数は200件以上で、一つ一つ歩きながら、状態をチェックし、主要品種については試し掘りを行いました。葉がこじれて生育が思わしくないもの、バイラス症状が見られたロット、フザリウム等でリン片に傷をもつロット、種球の更新が遅れ若々しい姿を失いつつあるロットなどが見られましたので、そのようなロットを扱わないよう今後十分注意していきたいと思います。

今週(1月21日)より、NZの植物検査機関による圃場検査が行われ、2月には日本からの植物防疫官と合同での検査が行われます。

 

4.各社の状況

アイランドバルブ社 :北島東岸のネイピア地区。15ha以上
ネイピアには比較的大きな港があり、ブドウ(ワイン用)、リンゴ(NZの約50%シェア)、かぼちゃ(日本輸出向け)の生産が盛んな地域。
07年より販売球サイズの生産がスタートし、マザーズチョイス、コンカドール、シベリアなどの生産がある。
これまでの生育は順調ですが、初めての本格的事業であり、今後の進展(管理、収穫、選別、パッキング、冷蔵、輸送etc.)を注意深く見守って参ります。

バンザンテン社 :南島ラカイヤ地区。70ha以上 面積は昨年よりやや増加。
NZの全作付面積の半分に当たり、植付方法の工夫や現地委託生産者を作ることで、収穫時期の作業の分担等ができ 安定している。コンスタンタ及びLA品種の生産が増加。チリでの生産から全面撤退し、NZのみの生産となる。生産と販売を自社で一元的に行なうことにより、品種選定や数量等、調整をはかっている。

バッカー社 :南島ラカイヤ地区。30ha以上 委託生産が増え、面積増加。
本年収穫までに、倉庫及び、冷凍施設を増築し、選別ラインを2倍に増やす。07年よりロビナの生産が始まる。

サザンフローラ :南島南部ゴア地区。30ha以上 面積は微増。
昨年は収穫機をアップグレードし、今年は新たな倉庫及び冷凍施設(総面積3,200㎡)を建設する。十分な容量を確保することで、スムーズな処理を可能にし、外部の貸し冷凍庫までの輸送コストを削減する。