中村 慶吾
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
1月21~28日まで、南半球のゆり球根生産地である チリにて、日本向け輸出の可能性がある全ての生産会社を訪問し、情勢 及び 生育調査を行って参りましたのでご報告いたします。また、現地で撮影いたしました たくさんの写真をホームページ上で公開しておりますので、ぜひご覧下さい。
1.生産面積について
当社調査によると、07年産の作付面積は、06年産に比べ 凡そ50ha増加、前年比 約14.5%増で392haとなりました。
先日お伝えしましたように、07年産 ニュージーランドの生産面積は 前年より約40ha増加し166haですので、チリの面積は南半球全体の約70%ということになります。(ニュージーランド出張報告-1月25日付)。
下記表のように、チリの生産面積は、毎年30%を越す増加率でしたが、本年産より増加傾向が落ち着いてきていると分析できます。
2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | |
合計面積(推定) | 170 | 250 | 342.5 | 392 |
前年比 | - | 47% | 37% | 15.5% |
生産会社ごとに見ますと、増加したのはサザンバルブ社、サン&ブリーズ社で、両社ともオランダの球根(切花)生産会社が母体となっている会社です。
逆に、昨年とほぼ同じなのはチリボーレン社、ピガ社、減少したのがソネ社、サンハーベスト社となっています。これらの会社は、球根輸出会社(ピガ社は自社で輸出機能を持つ)の意見が強く影響しており、比較的新しい品種が増加しつつある中で、世界的に需要の下がっている品種については、思い切って面積を減らしています。例えばソネ社では、ジェノバ(二芽が多い)、メデューサ(腐敗が多い)、アネアネ(人気がない)等が生産停止になっており、ソルディラ、ルシオン、アスカリ、ロンバルディア、リミニ、シンプロン等が、減少または 来年以降の生産停止を検討しています。
生産停止は1年で面積がゼロになりますが、新たに品種の生産を始めてから、ある程度の面積になるまでには数年を要すため、全体の面積としては減少する場面も出てきます。
2.気候と生育状況
チリの生産地は、北と南で400km程度離れており、地域(海側、山側など)によっても気候は異なります。特に北にやや離れているロサンヘレス地区は、他の地域と異なる(暖かい)気候で、これまでの気候はほぼ例年並であったようです。
全般的な06/07年 チリの気候は、ニュージーランドと同様 やや涼しい気候となっています。植付けが行われる9~10月は地域ごとに一時雨が多く、その後 生育初中期は、例年並か やや涼しい気候だったようです。摘蕾時期に入ってくる12月後半は、例年よりも雨が多く 気温も低く推移しました。
07年1月に入ってから、気候は回復し晴天が続いています。訪問時、最高気温は不安定で、ある日は27℃で暑いかと思えば、翌日は22℃で涼しいなど、風の向きなどで日々の温度差が感じられました。ただし、最低気温は安定して比較的高く推移しており、平均気温は平年並と言えるかもしれません。
今回も生産会社の皆さんの協力を得て、合計350件以上の品種・ロットを歩きながら見せていただき、その内 日本向けの品種を中心に85件(調査件数の約1/4)は、試し掘りをし 球根の状態 及び これまでの肥大を確認することができました。 ご協力に感謝しています。
全般に圃場の状況は良好ですが、葉の色がやや薄く感じられました。草丈や生育は平年並みで、生育スピードは例年よりもやや遅く、訪問時(1月22日の週)摘蕾の最終段階となっていました。
球根肥大は、地域により異なります。最も北のロサンヘレス地区では、植付けサイズから平均して1.5サイズ(3cm程度)既に肥大しています。
中ほどに分布している、ロスラゴス地方北部(バルディビア、リオブエノ、ラゴランコ地区)は 植付け時期により同じ畑でも違いがありますが、0~1.5サイズ(0~3cm程度)の肥大となっており、植付け時期の遅いものは まだ肥大が始まっていませんでした。
生産地の中で南に位置するオソルノ市周辺(プイェウエ、オソルノ、プーランケ、フルティリャール地区)は、これまでのところ目立った肥大は確認できませんでした。
通常 摘蕾の終了後、球根肥大が本格化しますので、現段階での肥大は1つの目安であり、重要となる今後の気候に注意しながら生育を見守りたいと思います。
3.各社の状況 (面積はリン片を含む)
●サンハーベスト社 : 20ha以上 ロサンヘレス地区
ゾディアック、ナイロビ、サッポロ、コルドバ等の自社生産分に加え、オランダの球根生産者及び切花生産者との委託契約がある。
●ソネ社 : 100ha以上 バルディビア地区
前年に比べて、総面積こそ減少したが、新しい品種のライセンスを購入し、水面下で増産計画を進めている。品種特性的に生産に問題があるような品種や、人気の衰えている品種を減少させ、効率と販売強化に努める。自社扱いのフレッター系新品種や、LAの生産などがスタートしている。
●チリボーレン社 : 15ha以上 リオブエノ地区
オランダのフェルデガール社との契約が中心。スタークラス、カナダなど、輸出会社の意向が強く感じられる品種構成となっている。
●ピガ社 : 15ha以上 ラゴランコ地区
生産面積は昨年とほぼ同様。今後は 既存生産品種の種球更新時期 等、生産の長期的な計画が求められる。
●サザンバルブ社 : 150ha以上 プイェウエ・オソルノ・リオブエノ・フルティリャ-ル、ロサンヘレス地区
南半球最大の生産面積となった。生育リスクを分散させるため、本社のあるプイェウエでの生産比率を減少させ、北はロサンヘレスから南のフルティリャ-ルまで、幅広く点々と生産個所を持っている。各地域に合わせた品種選択がなされており、地域ごとの生産状況 及び 状況調査ができたことは、今回の調査の大きな収穫だったと感じています。
会社は、昨年に引き続き、新たな冷凍施設を建設中で、面積増加に対応できるよう準備が進められています。
●サン&ブリーズ社 : 30ha以上 プーランケ地区
オランダの球根生産社ワゲナー社との契約生産で、ロビナ、ウィルケアルベルティ等、マークリリー系の品種の生産がある。この他、オランダの切花生産者との契約品種が増え、昨年比60%以上は、本年南半球で一番の面積増加率となりました。
サンハーベスト社 | ||||||
イエローウィン | イエローウィン球根 | サッポロ | サッポロ球根 | スターファイター | ゾディアック | |
ゾディアック球根 | ナイロビ | ナイロビ畑 | マルコポーロ | リアルト |
ソネ社 | ||||||
カサブランカ | カサブランカ球根 | カバレース | クーリア | コルソ | サンタンダー | シェルブール |
シベリア | シベリア2 | シベリア3 | ソルディラ | ソルボンヌ | ソルボンヌ2 | ソルボンヌ3 |
ソルボンヌ4 | ソルボンヌ5 | ティバー | ティバー球根 | バルパライソ | ベラドンナ | マルコポーロ |
マルコポーロ2 | メロースター | モンテズマ | ルシオン | ロンバルディア | LA球根 | 摘蕾機(最終段階) |
チリボーレン社 | ||||||
コンカドール | ティバー | マニサ | ロンバルディア | リン片圃場 |
ピガ社 | ||||||
カサブランカ球根 | シベリア | シベリア球根 | マルコポーロ | マルコポーロ球根 |
サザンバルブ社 | ||||||
■オソルノ周辺地区■ | ||||||
イエローウィン | イエローウィン2 | ウィルケアルベルティー | カサブランカ | クリスタルスター | シベリア | シベリア2 |
シベリア球根 | シベリア球根2 | シンプロン | スターゲイザー | ソルボンヌ | ソルボンヌ2 | ソルボンヌ球根 |
ソルボンヌ球根 | ティバー | ニュート | ノバゼンブラ | ノバゼンブラ球根 | ホワイトライオン | マニサ |
マニサ球根 | マルコポーロ | メロースター | メロースター2 | ラマンチャ | リアルト | リアルト球根 |
ルレーブ | 新冷凍施設建設現場 |
■ロサンヘレ地区■ | ||||||
イエローウィン | イエローウィン球根 | ノバゼンブラ | ノバゼンブラ球根 | ワールドホワイト | ワールドホワイト球根 | 圃場 |
サン&ブリーズ社 | ||||||
アクティバ | ウィルケアルベルティー | ウィルケアルベルティー2 | マスカデット | リアルト | ロビナ | リン片圃場 |