中村 慶吾
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
7月16~21日まで、南半球の球根生産地であるニュージーランドにて、全ての生産会社を訪問し、球根及び情勢の調査を行って参りましたので、ご報告いたします。
○ 気候と球根
06-07年の気候の中で、重要となるポイントが3つあります。
1. 植え付け以降 1月の下旬(真夏)まで、比較的曇天が多く、気温・日照ともに低かったこと。
(“2006-07クライストチャーチ気候グラフ”参照)
夏に適度な雨量があったため潅水の必要はなく、百合の生育もゆっくり(平年より2週間程度の遅れ)だったので、無駄に球根の力を消費しなかったことが、今年の肥大の良さにつながっています。しかし、夏場の低温と日照不足はオランダでの経験からすると、球根の力不足になる傾向があります。
2. 暖かく乾燥した秋。
2月 ~5月の中旬頃まで、雨量が少なく、日照が豊富で暖かく、百合は生育し続けました(特に5月の気温が高かったようです)。秋の気候としては最適で、百合はさらに肥大することができました。生産者の話では、平年より2割程度肥大が良いようで、品種によっては小球でショートが起きるものがあります。
3. 前半の生育遅れと、夏が涼しく秋が暖かかったため 芽形成が遅れたこと。
当社の、現地調査 及び 生産者の聞き取りでは、芽形成は平年に比べ10日~2週間程度の遅れで、(芽の大きかった)昨年と比較すると、(アイランドバルブ社を除く、同時期換算で)2~3割程度小さいことになります。
芽形成が遅れているなかで、5月下旬からは気温が下がり(霜も降りた)、その後6月はずっと寒く、下旬には-6~-7℃(ラカイヤ地区)にまで下がったため、芽は静かでおとなしかったと言います。
NZとしてはやや小さいですが、オランダ産と比べれば同程度です。
ただし、(オランダ産新球とは違い)日本で地温が高い時期に植えつける場合、芽の準備ができている方が有利であり、又 芽の大きい年の方が(特に促成で)リン付きが多くなる傾向があります。
(地域や気候によりますが)まだ温度が高い日本で、9月内に植えつけるにはやや心配がある年なので、例年通り10月植え(9月中下旬納品可)からのスタートが適していると考えます。逆に、抑制(1-2月植え)にも向いていると言えますので、春先の高品質・計画出荷(=単価安定)に役立てばと思います。
LAにつきましては、予定通りの収穫がされ、すでにマイナス温度下で保管されており、入荷し次第植え付けが可能なコンディションです。
○ 各社の状況
・バンザンテン社
作付面積は増えましたが、委託生産を増やし 分散化が図れているため、作業に落ち着きが感じられます。7月上旬に霧雨が続き2週間も収穫ができなかったことは誤算ですが、収穫機は十分な台数で、すでに掘り取りが再開されています。今年は肥大が良く、十分な数のプラスティックコンテナを準備するのに苦労したとのこと。うれしい悲鳴ですね。
・バッカー社
主にオニングス社の取り扱いで、部分的にバンザンテン社の委託を含みます。すでに収穫作業は終盤で、倉庫内作業も順調です。新しく建てた冷凍庫も稼動し、すでに輸出が始まっています。
・サザンフローラ社
6月に収穫を始めて間もなく、雨が続き中断。 天候が回復し、収穫を再開したと思ったら、激しいフロスト(霜)が入り、現在天候待ち状態で(毎年ですが)気候に恵まれない部分があります。新しい倉庫ができる予定でしたが、建設作業の遅れがでており、来週からやっと冷凍施設が稼動します。スケジュールは後手に回っていますが、地温が低い有利性が活き、球根自体は非常に締まっています。
・アイランドバルブ社
今年から開花球の収穫及び輸出が始まります。すでに開花球の収穫は終盤ですが、気候変動の影響か、最近になって100mm以上の大雨が降り、一部畑が水没しています。
収穫に関わる機械は、オランダで使い慣れたものを輸入して設定されており、作業もオランダ人の球根生産者が滞在して指揮を執っています。球根の肥大は非常に良く、きれいに見えますが、性質は未知数で どの程度の力があるか期待しています。
○ 産地訪問を終えて
ニュージーランド産球根が自由化されてから、今年で9年目になろうとしています。 すべての生産者を訪問しました。それぞれが独自のスタンスで球根生産をしており、過去にやめていった会社があれば、アイランドバルブ社のように 今年から(開花球の)輸出が始まる会社もあり、毎年が新しく気が抜けません。
ここ数年、毎年2回ニュージーランドに訪問しています。世界的に見ても輸入業者としてはかなり珍しいのではないかと思いますが、気候的にも変動の大きいニュージーランドですから、きちんと調査を行ったものを販売したいと考えています。
訪問の際、私が心がけているのは、(営業の人間だけでなく)生産者もしくは担当者のレベルにまで、日本という国を理解してもらおうということです。直感的に分かりやすい資料を添えて、品種動向や 植え付け時期の変化、各社の球根品質と切花結果の評価や、日本人の球根に対する考え方・要望を説明し続けてきました。当社の南半球産球根(チリを含む)発注球数は1000万球を超え、大事なマーケットであることはもちろんですが、彼らが日本(の切花生産者)を理解し、生産過程の判断や作業の中で十分意識していることが感じられ、嬉しく思いました。
毎回の訪問にもかかわらず、暖かく迎えて下さった現地生産会社の方々、ご協力ありがとうございました。