株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告 (2007/11/24)

株式会社中村農園
品質管理チーム

平素は格別のご高配を賜わり、心より御礼申し上げます。
2007年11月11日から19日まで、オランダにて球根収穫期における現地調査を行って参りましたのでご報告いたします。

1. オランダの気候
別紙、2007年オランダ気候グラフの通り、春が平年よりかなり暖かく、夏以降は平年並み(ここ数年は温暖化傾向で、平年値(過去何十年の平均)よりは高かったため、オランダ人にしてみれば日照が少なく寒かったという印象が強い)ようです。
秋の気候もごく平年並みに涼しく、9月上旬辺りから平均気温が15℃を下回り、平年より2-3週早く枯れ方が進みました。10月下旬には早霜が降り、一層熟度が増します。
11月中旬の訪問時には平年よりも1週間ほど早く アカプルコ、イエローウィン、スターゲザーなど、極早い品種の収穫がされていました。

2.平年並みの球根 と 長い芽
秋の地温が順調に下がっていることで、球根は全般に硬く締っています。収穫時のダメージが少なく、カビ腐敗の事故はかなり少なくなる見込みです。
下記、オリエンタル芽形成比較表の通り、今年の芽形成は十分に進んでいるといえ、06年産に比べると長さはあるもののやや細い印象になります。芽が大きい方がリン付きやボリュームがでる傾向にあり、昨年06年オ産はかなり大きくて全般にリンつきがいい年でした。

すでに収穫が済んでいる鉄砲・スカシ・LAでも同様の芽が高い傾向があり、鉄砲百合系の品種でサマースプラウト(収穫前発芽問題)が発生したり、一部のスカシ・LAでも数%の発芽球を確認しました。該当品種については特に注意して取り扱う必要があります。オリエンタル系では収穫時に発芽する心配はまずないと思いますが、今後急に温度が上がるようなことがあれば注意が必要です。
試し堀りによる調査ですので、雰囲気としてご理解いただきたいのですが、球根の肥大は極めて平年並みのオランダの肥大といえます。ただし、肥料を多用した圃場のものは肥大率が高く、スカスカした印象のものもみられました。
全般に二芽の発生が多い年となっています。春先の温度が高かったことや、前年の夏が高温であったことが理由として言われています。
球根は締っていますが、ずっしりとした(重量感がある)印象がないのは、開花期以降の日照が少なかったせいかもしれません。植え付けの行われた4月から10月までの日照は昨年1323時間に対し、07年は1276時間で 96.4%となっています。(球根生育に特に影響があると言われる)7月~10月までの日照量比較では、対前年86.4%)、平均気温についても下記表の通り、昨年を下回る数字となっています。
ただし、平年値に比べれば本年の気候が悪天候であったとはいえません。

球根の大きさと密度、芽の大きさを総合的に組み合わせて球根の力を評価すれば、近年稀に見る力を持っていた06年産に比べるとやや劣りますが、平年並みの力を持った球根といえます。

 

3. オランダの球根生産
今回改めて球根生産者(委託生産者含む)をまわり、現在の球根生産の中でも特に品質に大きな影響のある、収穫やその後の作業と機械を見ることができました。
現在、オランダの球根生産は球根や権利を所有し生産を行う生産者と、それに委託を受けて球根生産を代行する委託生産者とがあります。(詳しくは05年11月のオランダ出張報告をご参照下さい)
砂地で土地に限りのある北オランダから、東・南オランダでの生産が多くなり、遠方での生産の場合に委託生産者の協力による準備や管理が必要になります。収穫の作業やその後の洗浄・軽い選別等は、この委託生産者側で行われることが多くなりました。
さて、今回何件かの(委託)生産者を訪問し、収穫後に使われる機械等を見ました。
以前に比べて変わった(改善された)点は以下の2つです。

  1. アクアグレーダーの導入。洗浄機と何段階かのローラー選別を組み合わせたもので、洗浄能力に優れ、余分なゴミ(約25%)も除かれます。大球だけを委託元の生産者に送るため、これまでに比べて輸送量を大幅に削減でき、受け取った生産者も倉庫での選別作業の効率が上がり、コストの高い労働者を削減できます。ただし、この機械の導入コストは想像以上に高く、計算通りに採算が合うかどうかは疑問です。
    アクアグレーダーによる球根洗浄は精度が高いため、輸出業者での輸出用洗浄も容易となります。
  2. 初期消毒の導入。輸出会社によると現在およそ1/3程度の生産者が、収穫後 選別までの間に球根消毒を行っているようです。昨年のように収穫期の気温が高く、球根表面に傷が付きやすい年には、特に効果を発揮します。

 

4. 球根相場
今年の球根相場は、面積増加や一部の国の買い控え等が影響し低迷が続いており、球根生産者にとっては受け入れがたい価格が提示され、それでも買い手が付かない品種もあります。生産者により状況は様々で、優秀で有名な生産者はすでに多くの部分の契約を済ませている一方、人気のない品種が多い生産者は、まだまったく販売できておらず収穫せずに畑を潰すことも心配しています。有名な生産者でも価格に納得できず、これまで販売を拒んでいた(価格が上がることを今も待っている)生産者も同様に販売が進んでいないものがあります。品質のため生産コストや手間が上がる一方、それが価格に反映されない状況で、全ての生産者が一様に苦しんでいることには変わりありません。
ごく有名な生産者が、「来年から(自社所有の)球根生産を止める」との話も聞きました。輸出会社の話では、多くの生産者が面積を大きく減少させ、10-15%の生産者は来年から球根生産が継続できなくなるだろうと言います。収穫間際で瞬間的に安い相場になることは過去にもありましたが、多くの球根生産者を経営危機に陥れるような状況は、(近代化した球根生産の流れとなった)90年代以降初めてのことと思います。それほどの悲惨なムードにも関わらず、一部の(販売不振?な)球根販売会社が 品質を無視した 極端な価格を提示しマーケットに混乱を起こそうとする動きには共感できません。
これまで、球根肥大は平年並みからやや良と言われていましたが、今回の調査ではごく平年並みくらいの印象でした。収穫が進むにつれ、過剰感が薄れていくかもしれません。

 

5. 訪問を終えて
今回、畑での球根生産から、収穫作業、生産者側での洗浄、消毒、選別、輸出会社で の検品、冷蔵管理、品質の理解、輸出用洗浄からパッキング、輸出までのロジスティック、また港への輸送や船積みまでを含めた生産国側での全ての流れを調査しました。品質管理と一言で言っても、それに関わる要素は想像以上に多いもので、当社の場合 品質管理のチームにより総合的に調査 及び 実務に当っています。今回、チームの主担当者全員でオランダを訪問し、個々に関連する部分を現地で確認できて かなり良かったと思います。
お客様からのアドバイスや忠告を、品質の安定と向上につなげていけるよう頑張ります。 現在、当社の社員がオランダに(1月末まで)駐在しており、継続して調査を行って、定期的なレポートをお届けすることが出来ると思います。ご期待下さい!

 

アクアグレーダー イエローウィンの球根 ウィルケアルベルティーの球根 ウィルケアルベルティーの畑
カサブランカの芽 カサブランカの球根 カサブランカの畑 クリスタルブランカの畑
シベリアの芽 シベリアの球根 シベリアの球根2 ソルボンヌの球根
ソルボンヌの畑 ティバーの芽 ティバーの球根 ロビナの球根
ロビナの球根2 ロビナの畑 収穫風景