株式会社中村農園

レポート・球根情報



チリ出張報告(2008/1/30)

中村 慶吾

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
1月14~20日に、南半球のゆり球根生産地である チリ(CH)にて、日本輸出向け主要生産会社を全て訪問し、情勢 及び 生育調査を行って参りましたのでご報告いたします。

2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 前年比
チリ生産面積推移(ha) 170 250 340 392 399 101.79%

2008年チリ産の作付面積は、ソネ社等でやや増加したものの、サザンバルブ社の販売球面積は減少したために、全体としては399ha(+1.79%)となりました。

下記、南半球ゆり球根生産面積表(中村農園調査)の通り、昨年まで毎年かなりの増加をしていたチリですが、今年は昨年並みとなっています

NZとCHを合計した南半球産の面積は約600haとなり、オランダ産オリエンタル・OT 1871haの1/3程度の面積です。オランダの生産者にとっては危機感があるでしょうが、南半球の各生産者も作ればそれだけで簡単に売り切れる程甘くはない事を感じつつあるように見えました。
チリの作付け品種構成は、昨年の販売状況に大きく影響されているようで、需要国の趣向の変化や、特定サイズしか売れず販売に苦しんだスターゲザーやマルコポーロ、アカプルコ、ロンバルディア等が減少し、冬向き品種や新品種としてマニサ、ロビナ、サンタンダー、ヒルベティア、またLAの生産が増えています。

2.気候と球根
植え付け時期の天候は良く、11月以降も雨は少なく気温も高めに推移しました。 12月のクリスマス頃には各地で温度が高くなり、北にあるロサンヘレス地区では一時38-40℃まで気温が上昇したところもあります。1月に入って気温がやや涼しくなり、訪問当時の最高気温は20度台前半、最低気温が10℃を下回っていて、やや寒い印象を受けました。
各産地で球根の試し掘りを行った結果、北の暖かい地方で肥大が始まっていますが、南方のロスラゴス地方北部(バルディビア、リオブエノ、ラゴランコ地区)は肥大が始まったところ、最も南にあたるオソルノ市周辺(プイェウエ、オソルノ、プーランケ地区)は肥大が見られない状況で、昨年と比べ同程度かやや遅めといった印象でした(昨年は秋に気温が下がるのが平年よりも早かったようで、肥大が十分ではなかった年)。 南半球では2月前半が真夏に当り、以降3-5月に肥大が進んで行きますので、これからの天候を見守りたいと思います。
球根は全般に硬く重量感があり、これまでの所 ニュージーランド同様、日照には恵まれていますので、力のある球根が期待できると思います。

3.2008年南半球産の販売状況と課題
おかげさまで、たくさんのお問合せをいただきありがとうございます。発注を計画する上でも、非常に参考になります。
現在、主要業者との話が進んでおり、ほぼ全容が見えてきました。2007年オランダ産の過剰感を受けて、世界的な球根マーケットは弱含みになり、SH産と言えども 全体としては昨年産よりも単価水準は下がる予定です。(ユーロ高にも関わらず!!)
チリの球根生産でも、オランダ同様 古い品種(需要が減り価格が安くなったもの)から脱却し、新品種の生産に力を入れる傾向があります。品種選択において、偏った情報で既存の品種の生産が極端に減少したり、人気の見込めない品種が増産される危険性も含んでおり、当社としましても 今まで以上に情報交換を進め、需要と生産の連携を密にする必要があると感じました。オランダ語で、“新しい靴を買う前に、古い靴を捨てるな。”ということわざがあるそうです。
これまでチリの生産は、植え付け密度によるサイズ調整は行ってきたものの、意図的に植え付け時期を分けることや、複数年生産等が少なく、切花用には適当でないサイズも多く生産される等、問題がありましたが、今回の訪問では、こうした工夫が多く見られるようになり期待できます。ΝZが面積の割りに生産量が多く見えるのは、マーケティングにより品種・サイズの需要を掴み、それに合わせた肥大のコントロールがある程度出来ているからだと思います。
話が少しそれますが、今回 チリ・ΝZ両国を訪問して驚いたのは、(バイオエタノールの影響か?)小麦の生産が急速に増えていたことです。昨年と景色が大きく変わり、高速道路の両側に一様の何百haもの麦畑が広がって、農産物生産の変化のスピードとダイナミックさは圧巻です
それに比べてユリ球根は、限られた土地で微妙な潅水をコントロールし、形や大きさ・品質を整える人工的な作業であり、農作物というよりも、園芸作物に近い側面をもつものだと感じます。
生産技術も収穫後の機械やシステムも、毎年訪問する度に改良がされており、より計画的な生産をできる(需要に合った仕事ができる)生産者が、シェアを伸ばしていくのだと思いました。

 

ソネ社

カサブランカの球根 カサブランカの畑 コンカドールの畑 サンタンダーの畑
シベリアの球根 シベリアの畑 ソルボンヌの球根 ソルボンヌの畝
ソルボンヌの畑 ブリンディジの畑 フレッターの委託畑 リアルトの畑

 

サザンバルブ社

イエローウィンの畑 コンカドールの球根 シベリアの球根 シベリアの畑
ソルボンヌの球根 ソルボンヌの畑 ノバゼンブラの畑 マルコポーロの球根
リアルトの球根 ロサンヘレ畑全体 ロビナの球根 芽摘み風景

 

その他の生産者  ※(  )内  PG=ピガ社、 SH=サンハーベスト社、 S&B=サン&ブリーズ社

エクスプレッションの畑(PG) ヒルベティアの畑(PG) イエローウィンの畑(SH) スターファイターの畑(SH)
潅水システム(SH) 新倉庫(SH) ウィルケアルベルティの畑(S&B) サン&ブリーズ倉庫
セラノの畑(S&B) ヒルベティアの畑(S&B) マスカデットの畑(S&B) ロビナの畑(S&B)