株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(2008/6/14)

中村 慶吾

平素は格別のご高配を賜わり、心より御礼申し上げます。
6月3日よりオランダへ出張し、現地にて情勢調査を行って参りましたのでご報告いたします。

1. オランダの気候
本年オランダの気候は、3月下旬~4月前半の植付け時期にかなり温度が下がり、遅霜で10日ほど植付けが遅れました。
5月に入りますと温度が急上昇し、月間平均気温は平年に比べ3℃も高く、初期成長が早まり、発根が不足するのではないか(?)との意見も聞きました。
6月上旬のオランダ訪問頃の気温も同様の傾向が続いていました。別紙“2008年オランダ気候グラフ”をご参照下さい。
基本的には、温度が高く日照が多いことは球根にとって良い事で、今後の天候を期待しています。

 

2. 育種の現場
6月は育種会社が交配を行う時期です。今回の出張では、主要な育種会社を訪問し、目指す品種の傾向を探ることとなりました。

・LAハイブリット:品種改良が進んでいます。マークリリー社では、育種に適したスカシ(右図Aのように、色がかなり濃く、花が大きく開き、葉が極端に短い、営利栽培用としては不向きな性質を持つもの)を鉄砲に掛け合わせて、葉が広く短くリン付きも良いが花も十分な大きさを持つものを多数開発しています。

・OTハイブリット:育種が盛んです。フレッター社では、これまでの黄色、ピンクに続き、白(純白)で姿のきれいなものの開発を進めています。また、今後は原油価格高騰を意識した、低温に強く 生育の早いものなど、OTならではの特性を活かした品種選抜も目指します。

・オリエンタル系:キューケンホフ・リリーパレードでも目立っていた、バンザンテン社の「シグナム」と「メリーバ」は、リアルトの雰囲気を持った大輪系の品種で、完成度が高く非常に期待されています。

・ポットオリエンタル:マックブリーディング社では、完成度の高いポット用オリエンタル品種が多数 見られました。

2008年春は、オランダ生産者の暗いムードとは逆に、発表品種自体は多かったように思います。ただし、それらの品種がヘクタール単位の生産になるまでには何年もかかり、その間に(早いものは既に生産にはつながらないだろうと判断され)今後、生産されないものも多いのが現状です。
以前に比べ、(他の育種会社の品種を利用する育種が当たり前になり)各社の品種の完成度は高まっています。比較的良い品種がたくさんあると、逆にピントがボケてしまうという感じで、育種会社側で品種数を絞り込み、ソルボンヌやコンカドールが発表された時のように、業界全員が注目するような品種がでてくることを期待しています。

シグナム

3.オランダ産オリエンタルの面積
以前のレポートでもご紹介の通り、07年産は結果として生産過剰(マーケットも過剰反応?)となり、その影響を受けた08年オランダ産の球根価格は、球根生産者にとって赤字になるような価格帯となってしまいました。マーケットのムードを改善するためには15%以上の面積減少が必要と言われていますが、輸出業者の意見を平均すると10%程度ではないかと思います。
ただし、今現在の07年オ産の在庫状況は、輸出業者が概ね完売、買いそびれた国々が 逆に値上がりした球根を購入した、十分に買えていないなどの皮肉な話があります。  昨今、新聞紙面で“世界的な食料在庫率の急低下”など目にしますが、品種によっては生産停止や急激な面積減少が起きており(カサブランカが代表例)、いくつかの品種を除くと、案外 需要に対する全体的な球数は多すぎる事はないのかもしれません。

以上、簡単ですが出張報告でした。

出張中に撮影しました写真をHPにて公開いたします。ぜひご覧下さい。