株式会社中村農園

統計



オランダ出張報告(2008/11/26)

中村慶吾 和田まり子

平素は格別のご高配を賜わり、心より御礼申し上げます。
11月9~17日まで、オランダを訪問し、圃場や球根の状況、球根生産者、輸出会社にて情勢調査を行って参りましたのでご報告いたします。

1. オランダの気候と球根の状態

別紙、2008年オランダ気候グラフをご参照下さい。
①本年春の植付けは3下旬~4月上旬の遅霜により2週間ほど遅れました。
②5月以降は急激に温度が上昇し、発根不足が心配されましたが、さだかではありません。
③夏の天候は、昨年同様 温度と日照量は平年並み(近年の温暖化の中では涼しい事になる)で、球根の力不足が心配される。(2007年産は全般にリン付きの少ない年だった)
④9月下旬より温度が下がり、軽い霜が起き、生育は抑制される。
⑤10月下旬には 数日間、最低気温がマイナスとなった。

9月頃までの話では、上記①~③を取り上げて、2008年オランダ産の肥大は平年並~やや小さい、球根の持つ力は(力不足を感じさせた)2007年産に近いとされてきました。

○当社では、主要球根生産地にてたくさんの畑を周り、品種ごとにサンプル球を堀り、球根及び芽形成状態の調査を行っています。特に芽形成調査は、過去5年間ほぼ同じ時期にオランダを訪問し、定点調査・数値化を行って、印象ではなく具体性を持って評価をしています。

● 球根の肥大はまずまず
今回の試し掘り調査によりますと、
2008年産の肥大は、一般に言われている通り、平年並みで大球が少ないようです。
2007年産の球根肥大は、結果的に良かったとされており、今年に比べて0.3~0.5cm程度肥大が良く(当社調査集計)、その分見た目ほど力がない球根であったと考えられます。
2008年産の植え付けの際には、肥大しすぎては困る品種では大きい種球を密植し、肥大を調整しているものがありました。
そのため、 粗植の 小さい種球の肥大は 良いが
密植の 大きい種球の肥大は 小さい
つまり“大きいサイズは少ない”ということになります。
密植によって肥大の抑えられた球根は、硬く締っていて重量感があり、見た目よりも中身の詰った印象を受けました。

● 太めのどっしりした芽
芽形成調査によりますと2008年産の芽は、下記表のように2007年産と比べ、芽の長さは同等ですが、より太い芽になっています。太さについてはリン付きの良かった2006年産に近い数値です。内リン片数と葉枚数が少なめなのは、植付け遅れや秋の温度の下がりが早かった影響かもしれません。

外リン片数 内リン片数 芽長 芽幅 葉枚数 茎長 茎幅
前年比 106.6% 96.8% 101.7% 104.0% 92.4% 101.2% 107.9%

球根肥大が抑えられている事 + 芽が太くしっかりしている事 ⇒ 球根の力は平年並み~やや良で、2007年産よりもリン付きは良いだろうと当社は考えています。
これは、業界全般に言われている内容とはやや違った見解ではありますが、来年 結果を見るのが楽しみでもあります。
(08年NZ産球根も同じような傾向で、リン付きが良いようです。詳しくは当社ホームページ2008年8月6日付“南半球出張報告‐ニュージーランド②”を参照。)

圃場調査で撮影しました写真を、ホームページにて公開いたします。ぜひご覧下さい!

 

2. マーケット状況と球根生産者

2008年オランダ産は、世界金融危機・切花価格の低迷など、先行き不安から球根の注文が控えられ、稀に見る販売の遅れとなっています。
スカシ品種は、面積が減少していることもあり、メイン品種で完売が多くなっています。
LA品種は、多くの品種で売り先が決まらず、収穫を断念したり、掘り取り後 廃棄されるものがでています。
オリエンタル品種は面積が減少したものの、球根生産コストを割ったような価格で低く推移し現在に至っています。LAと同様、生産をしているのに商品にできない品種や圃場も出て来るでしょう。

○ 厳しい、球根生産者の現状
何件かの球根生産者を訪問した際の話です。
①ある品種で、1サイズだけに注文が入っているが、他のサイズは売れていない場合、そのサイズだけを掘る事はできませんから、畑全体を掘り取り・選別しなければなりません。球根を掘り取るにも、選別するにもコストがかかるため、少なくとも全体の2/3程度が売れていなければ収穫を断念(廃棄)するものも出ています。このため生産過剰で余っていた品種が、突如完売になるケースがLAで見られます。

②需要の変化が早すぎてリスクが高すぎることも指摘されています。例えば、今年まで他国で多くの需要があったゴールデンタイクーンとマニサは、08年産からパビアとコンカドールへと急激に需要が変化しました。これは調整程度では回避できない問題です。
特に新品種の生産に当たっては、3年かけてようやく販売球ができた時には需要が全くないこともあります。
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③世界金融恐慌の影響で、銀行自体の経営状況が悪化し、融資の査定は一層厳しくなり、球根生産者は生産費用を工面するのが難しくなると言われています。輸出業者の話では、経営内容が悪い生産者は、必要な融資を受けられず、2009年の百合球根作付け面積は激減(30%程度?)するだろうという意見も聞きました。

○日本国内の球根流通量
・ 2007年オランダ産の輸入球数は、1億3177万球。前年比マイナス7.2%。 (植物防疫所‐植物検疫統計 11月26日付)
・ 2008年南半球産の輸入球数は凡そ2500万球となる見込みで(07年SH産から微減)、   内LAが200万球程度増加しているとすると、オリエンタルは8%程度減少することになります。球根及び花市場関係者の間で、“百合切花の1-3月出荷は1‐3割減少する”と言われる根拠の一つであると思います。(余談ですが、当社ではSH球根について11月まで冷凍賃がかかりません。)
・ 2008年オランダ産の販売状況は、これまでのところ 輸入量が減少した昨年よりも更に遅いペースであり、再び減少すると見られています(1億3100万球 → 1億1500~2000万球?)。

○ 輸出会社の在庫状況
球根生産者は保管用の施設を持っていませんから、収穫後行き先がなければ廃棄されてしまいます。又、収穫後速やかに消毒・パッキング等 適正な処理がされなかった球根は、品質が劣化し、使用に耐えません。しかし、輸出会社側も需要が読めず、各社の在庫状況は平年に比べ少ないようです。

 

アカプルコの芽 アカプルコの畑 イエローウィンの芽 イエローウィンの球根
イエローウィンの畑 ウィルケアルベルティの球根 カサブランカの芽 カサブランカの球根
カサブランカの畑(4ha) クリスタルブランカの芽 クリスタルブランカの球根 コンカドールの球根
コンカドールの畑 サンタンダーの球根 シベリアの芽 シベリアの球根
シベリアの畑 ジャスティナの芽 ジャスティナの球根 シンプロンの芽
シンプロンの球根 シンプロンの畑 ソルボンヌの芽 ソルボンヌの球根
ソルボンヌの球根2 ソルボンヌの球根3 ソルボンヌの畑 ナンバー品種の養成圃場
ノバゼンブラの球根 マニサの球根 マニサの畑 マルコポーロの畑
メデューサの球根 メデューサの畑 モンテズマの芽 モンテズマの球根
モンテズマの畑 ユニバースの球根 リアルトの球根 リアルトの畑
ロビナの球根 ロビナの畑 収穫風景