株式会社中村農園

レポート・球根情報



情勢報告(2017/10/5)

お客様各位

情勢レポート

2017年10月5日
株式会社中村農園
中村 慶吾

 

 いつもお世話になっております。
 早いもので、今年も残すところあと3カ月となりました。月が変わるごとに日が短くなり、雨が降るたびに気温が下がってくるのを感じます。
 今年の夏は、35℃を超える高温、台風の暴風と豪雨など、温暖化による自然の猛威を目の当たりにしました。9月は、秋の彼岸の週末に台風が通過するという最悪な条件でしたが、百合の相場はまずまずだったように拝察いたします。
 以下、海外を中心に、情勢についてご報告いたします。

 

1.最近のオランダの切り花事情

 今年のオランダは、5月末に真夏のような30℃を超える気温になり、百合切花が集中出荷されました。その為、出荷量の1/3が最低落札価格を下回り、廃棄処理されるという事態になりました。
 オランダはイギリス向けの輸出が多く(ドイツに次いで第2位)、これまで安定した需要がありましたが、EU離脱決定後、ユーロに対し(15%程度)ポンド安となりました。イギリスマーケット(主にスーパー)は、ポンド換算の切花仕入価格が高くなると、扱い量を2割近く減らす対応をとり、結果としてオランダの切り花相場は春以降、上下を繰り返しながら、やや低迷を続けています。
 オランダの百合切花生産は、20年かけて効率化と大規模化を進め、生産面積が10Ha近い会社も多くなりました。大手切花生産者が卸会社に直接販売することも増え、また市場ではネットセリの普及もあり、セリ場に活気がなくなりました。
 量販・卸は生産者側に更なる効率化と低コストを求めてきました。ところが、これ以上安く調達できないところまで来ると、今度は在庫をもつリスクを嫌い、むしろ市場を通じて消費者の注文(ネット小売り販売も増加)に合わせた小ロット多品目へと変化してきています。これは、需要志向が(日本的に言えば)もの消費からこと消費へ転換したのに似ていて、価値の多様化やインスタ効果かと私は思います。これからの時代、花を販売する側は、目利き力と機会提案力が求められます。
 結果的に、フローラホーランドのセリ件数は細分化によって、このところ増えてきており、一方で、花の卸会社の新しい施設を建てる予定だったウェストランド花市場横の広大な土地は、長年建設が始まりません。

 

 ところで、自然環境による集中出荷は、2000年前後までは露地栽培に限った事でした。2001年に私がオランダ研修をしていた時に、3Ha近い露地のカサブランカを畑の端から切る作業をした経験を思い出します。
 しかし、最近ではハウスの大型化と温暖化が進み、むしろ大規模ハウスでも問題となってきている気がします。1棟で1Haを超えるような大型ハウスの場合、昔の涼しいオランダの気候であれば安定した環境が維持できましたが、近年は日本のように気温が上がり、ハウス内部の換気が不十分な場合、出荷スケジュールは乱れ、品質も低下します。
 四季があり、温度日格差の大きい日本では、数反の風通しの良い高度ハウスを単位として生産規模拡大が図られてきましたが、量と質、効率と計画性のバランスを取るのに適しているからだと理解できます。

 

2.コンカドールバブルの終焉が近づく

 百合球根の世界では、アメリカ、イタリア、日本と、時代の移り変わりとともに球根需要が急激に発展してきました。その後日本がピークを超えると、中国が台頭し、ベトナムも加わって、この10年の世界需要を作ってきました。特にコンカドールはそうした時代を象徴する品種で、球根生産面積は2017年産も大きく増加を続けています。
 ところが過去数年、両国の最大需要期である旧正月(ベトナムではテットという)では、気温の変化に対応できず、需要期前後に大量出荷され価格の下落を経験しました。この影響はボディブローとなっています。
 さて、中国がEUのソフトチーズに使われている菌がリストにないなどの理由で、2017年9月に輸入禁止になりパニックとなりましたが、大国の政治的リスクは今後、さまざまな業種にとって懸念されるものと思います。私たち球根業界でも、2017年9月に中国(雲南省)向けオランダ産球根輸出の最終盤に、ソフトチーズのような現象が起きています。今はまだ、状況がはっきりしていませんが、アジア向けOTをメインとする球根生産者にとって、2017年オランダ産以降、明らかな影響をもたらすだろうと予想されています。

 

3.ヨーロッパの好景気とユーロ高(円安)

 先般、情勢報告でもご紹介の通り、4月に1ユーロが115円から122円前後へ、5月に1ユーロが125円へと続伸し、8月には1ユーロが130円を超えました。さらに現在1ユーロ=133円程度で135円に向かって推移しており、6カ月間で日本円は15%以上価値を下げたことになります。ドイツを中心とした好調な景気と株高により、ECB(欧州中央銀行)は金融緩和の縮小を予定しており、来年春に向かって一段と円安が進む可能性が出てきています。
 球根輸入にとりましては厳しい状況となっておりますが、弊社は、関わるお客様の経営安定と、お役に立つことを目的としており、私たちの地道な努力とその効果を、皆さまに届けていきたいと思います。今後とも更なるご支援をお願い申し上げます。

 

4.ニュージーランド研修旅行のご案内!

 別紙の通り、4泊7日という日程で、とてもアクティブな旅行となります。ヨーロッパより比較的高くなってしまうオセアニアへの旅費を、できるだけ安く抑えられるよう調整しています。球根生産会社視察以外の部分につきましては未定ですが、参加者のご希望を伺いながら、充実した楽しい内容にしていきたいと思っております。

 

5.『11月もゆりの展示会』を開催!!

 11月23日(祝日)はアメリカでは“ThanksGiving(感謝祭)”ですが、「11月もゆりの展示会」は、日ごろお世話になっておりますお客様をご招待して、開花時期を迎える試験ハウスを鑑賞しながら、同じ時を過ごそうという、参加型交流イベントでございます。
 抑制栽培は、実は春よりも品種特性が理解できるともいわれています。球根に適した弊社冷蔵施設で品質管理された、長期保管後のオランダ産抑制試験にぜひお越しください。
 ご来場の際には、10月中旬定植の南半球産の試験も合わせてご覧いただけます。CH産、NZ産を幅広く取り扱う、弊社ならではの品種数、さらにロット試験(場)もご覧ください。また、16年オランダ産のナンバー品種などの隔離試験も行っております。

 

 社員一同、多くのお客様にお会いできるのを楽しみにしております。イベント実行委員会より、追って「11月もゆりの展示会」のご案内を差し上げます。よろしくお願いいたします。

以上