お客様各位
チリ出張報告
2018年3月12日
株式会社中村農園
中村慶吾
いつもお世話になっております。
2月25日~3月2日までチリに出張し、18年CH産の日本向け球根を生産している全ての現地会社にて生育状況等について調査してまいりましたので、以下にご報告いたします。
① 晴れた涼しい夏
チリの球根生産地は南北で最大500Kmほど離れ、標高も東西で150mくらいの差があります。南のオソルノ市を中心とした地方でも、南北に75Kmの差、北のロサンヘレ市を中心とした地方では南北に100Kmの差(気温差2℃程度)があり、それぞれ固有の天候(マイクロクライメット)の中で、条件に合わせた生産方式やスケジュールが選択されています。
今回訪問した中で、共通して聞こえたのは「春が涼しかった」「夏が涼しい」という点です。10月に軽い霜、12月に雹が発生した地区があり、夏は天気が良く乾燥していたけれど平年に比べて30℃以上になる日が少なかったなど、総じて涼しかったことが伺えます。道端にアジサイが咲いていて、圃場でも植付けが遅かったロットで摘み残された花が開花しているなど、生育ステージは例年よりも遅れていると思いますが、肥大の調査結果は平年並みを示しています。
写真上は、既に地上部を刈り取られた2年栽培ロット
歩いて見て、掘って測ってわかる事がたくさんあるのですが、例えばシベリアとテーブルダンスで肥大が良かったのは、意外にも最も南にあるプーランケ地区でした。昨年とは違い、(太陽のある)北向きの少し丘陵な畑は、畝の間の通路ですら足が沈むフカフカな土で、百合の葉はつやつやし、雑草もなくとても整理された圃場でした。
初中期の肥大の良さは球根の力を考える上でも重要で、肥沃なチリ南方の隠れた資質と球根生産の奥深さに少し驚き、土質についても研究されるべきだと思いました。
②品質の出口戦略
チリの球根は、ここ数年お客様からもお声を頂けるように、品質改善が進みました。
特に、プラムバイラスについては5年ほど前からティシューによる更新を徹底し、リンペン母球は隔離した圃場で栽培され、チリ国内での種球生産規模は年々拡大しています。
チリの生産者たちは、新品種の導入がなければ、オランダからの種球を極力使わなくてよい状況に変わりました。1.5年栽培の様に、オランダで収穫された種球をすぐに輸入して植え付けるような体系はほとんど見られません。この辺りが、オランダとの種球連絡で、効率を確保してきたNZ産との違いになってきています。品質浄化のため、面積を大幅に減少させた生産者もおりましたが、心配はあるものの、不安から解放された前向きな姿勢が印象的でした。
③ 中堅が支える現場の品質
私どもがチリに訪問を続けるようになってから17年になり、その間、国も経済も変わっていきました。昔は町の中でもグラベル(舗装されていない路面)の道路も多かったですが、今は圃場の入り口まできれいな道が付いています。球根生産でも昔のような人海戦術はなく、機械や施設もオランダと同じ規格に変わりました。その間、生産会社の担当者も変わっていきました。気候も収穫期の天候も毎年異なる球根生産において、何かできない理由を語るよりも、現場でやるべき事を遂行することの方が大事で、10年以上の経験者たちが中核となり、チリの球根生産現場を支えています。
今回の訪問で彼らと昔を振り返る機会があり、「ロサンヘレに移ってから、次の春で15年になる」「昔と比べ夏の気温が高くなって、消毒の回数も倍くらいになった」「この畑は10年前と同じ場所です」「(今までお会いしなかったが)実は12年間この地区の圃場担当をしております」、「昨年から(別地区の)担当の若者は、あなたの息子さんだったんですか」なんて会話が時間を感じさせてくれます。又、圃場の管理は経験に加えて、やはりそこに住む人の目が行き届かないといけないなと実感しました。
一方で、オランダの切り花生産者を主体として、今年から球根生産(初収穫)を立ち上げる会社もあり、誰よりも先に圃場を拝見させて頂きました。新しい地域、高知のような気候、土質、人、設備など、チャレンジの年になるでしょうが、南半球の球根生産の歴史に、新たな1ページを加えてくれると思います。
④ 2018年南半球産について
アジア全般に、旧正月向け切花出荷が3年続けて外れてしまった結果、需要見込が不明確になり、球根生産者と一部輸出会社との交渉が遅れています。南半球産百合球根の日本の総輸入球数は、LAの減産などにより減少し続けてきた中で、弊社の取扱シェアは毎年少しずつですが、前年を上回るご支持を頂けるようになりました。
まもなく2018年南半球産の価格をご提示できる段階となりますが、弊社は、お客様のご支援とご理解に心から感謝し、物量を活かして良い球根をより安く、日本の百合切花生産における、プラットフォームとなる球根屋を追究してまいります。
輸入・輸送だけでなく、国内の冷凍保管など様々なコスト上昇圧力はやや深刻で、2017年SH産では販売チャンネルによって、いよいよ2桁の単価差があったという話も聞きます。更に、出荷手数料や冷凍賃の違いも毎年の事ですから小さくありません。球根専用冷凍施設は、コスト面に加え、保管品質・利便性としても見直されております。
さて、南半球の球根生産会社は、営業を任せるオランダの輸出会社を絞り込んでいます。同じ国に輸出するのに2社も3社も分けて作業効率・施設効率を下げ、コストとリスクも上がる事を看過しなくなったとも言えます。輸出会社側も、日本の将来像を意識してきており、ハード面では自社冷凍施設、試験ハウス、ソフト面では営業チーム力、プロモーション力、先見性などが着目されていると感じます。
「球根生産:輸出=輸入:切花生産」が1つの線となり、百合以外の品目と競うための中長期的協力が必要となってきているのかもしれません。アジアの勢いとは違いますが、安定した成長が日本の特徴であると思います。弊社は数少ない百合球根専門の会社として、20年近く毎年、チリ・ニュージーランドを訪問し続けており、現場で培ってきた理解と信頼関係が、それらをつなぐものと思いました。
以上