お客様各位
オランダ研修報告
2 0 1 8 年6 月7 日
株式会社中村農園
中村慶吾
平素は格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。
5 月末より、オランダにて研修して参りましたので、以下にご報告申し上げます。
① オランダ人は花が好き!?
八重の品種が多くの育種会社で発表されるようになり、この2-3 年に品種名が付いたものが、球根生産者グループに販売されました。アジアショックでライセンス販売が停滞している中ですが、今年も球根生産者の多くが、八重であれば投資を継続しようと考えます。時に育種会社の選抜ハウスで数本だけのサンプルを見て判断する状況は、白OT フォーエバーが発表された時と重なります。
こういったムードになるのは、オランダで現在流行している、「フィールドブーケ」の影響があります。花業界に関係のない投資家が始めた、インターネットの花販売サイトが提供する、花の盛り合わせプラン。草丈をあえて揃えずに、野原のように雑多な花が含まれ、観葉植物で埋めないカジュアルさが特徴です。花の生産は多いのに、家庭消費が他国に比べて少ない印象だったオランダで、初めてできた花のコンセプトとも言えます。街の花屋でも簡単にマネできるため(上写真)、同様のアレンジで消費者を意識できる機会となりました。
百合は、蕾のまま他国へ輸出され、身近な生活で見ることが少ない=業務用出荷のような傾向のため、家族や友人に人気のフィールドブーケに、憧れとジェラシーを感じるのは容易に想像でき、新しい風を感じさせます。
② シャクヤクが示す課題 5 月後半に記録的な高温となり、露地栽培のシャクヤクは、例年以上に短い2 週間で全てが採花され(一部は切ることすらできず)、今年もまた市場の花相場を低迷させています。露地に株が残り、成長して増えていくため、来年も同じことが予想され、過剰になったワイナリーのような長期的な問題を抱えます。スーパーでは、大きな看板で通常3.99 ユーロが、1.99 ユーロになっていましたが、消費者の花コーナー全体への興味を削いでいるように見えました。
生産性だけを追求した生産→コスト削減→販売価格低下=消費量拡大=豊かな花文化、ではない事を、上記①のような例が示している気がしています。百合の花の普及は未来ある子供のように、適度なバランスと質の高い感性で育てなければならないと思います。今回、研修旅行に参加して下さった花屋さんが、それまで百合が好きではなかったのに、ある朝とても美しい百合に出会って、ズキューンっと恋に落ちた話をしてくれました。
Fall in Lily の経験は、案外、ゆり関係者あるある な気がします。
③ 八重が求める、水揚げ時間の延長
採花後の水揚げで蕾が要求する水量は、花弁の体積に比例していると想定されます。古い品種や、小さい花は、花弁が必要とする水分量が少ないため、給水時間が短くても問題ありません。しかし、蕾が開きながら肥大する品種や、花弁自体の枚数が多い八重では、生育中の緑にだけ求められていた水分量に比べ、開花時に花弁が求める水分量が相対的に増加すると考えられます。オランダでは、市場が貸し出す安価な段ボール箱での輸送がありますが、最近は百合も水につけっぱなしのバケット輸送が増えてきていました。
高温期の、短い水揚げ時間による開花時の事故は知られていますが、今後八重の普及を進めるにあたり、採花前も潅水を続けることや、採花後も水から離さず、選別ラッピング後にも水に付けて、発送前に箱詰めするような丁寧さが求められます。
最後に、研修旅行中にお世話になった、オランダの輸出会社、育種会社の皆さん、ご協力に心から感謝申し上げます。ダッチリリーデイズの活況と成功を祈念致します。
以上