情 勢 報 告
2018年9月26日
株式会社中村農園
中村慶吾
いつもお世話になっております。
①2018年南半球産の輸入予定数について
9月上旬に、南半球産に関わる輸出会社にアンケートを取りましたところ、日本向けの販売球数は、下表の通りとなりました。下段は、前年同時期の2017年南半球産のアンケート結果です。比較しますと、オリエンタル・OTは、約200万球(約1割)の減少となり、過去に経験したことのない調整となりました。
今年、4~6月に花卉全体の相場が低迷した影響に加えて、チリ・ニュージーランド産の大球の欠品が多かった事により、全体に南半球産の抑制(1~2月定植)の計画が立てづらかったように思います。例年、オランダ産の新球入荷はオリエンタル・OTだと2月頃からになりますので、冬から春に向けての百合の切花出荷が継続され、偏らないよう、生産計画のご確認をお願い致します。
花の品目によっては、今年の酷暑や台風などにより、育苗や作型の乱れが出ています。大田花き“花の生活研究所”のフラワービジネス手帳2019にもあるように、百合は年間どの月にも安定出荷されている花で、しかも流通している百合の殆どが国産ですから、日本の花卉自給率向上にも貢献している花です。現在も被災地からの花が出荷されていますが、ニッポンの花を楽しむことは、台風や災害などで被災された生産者も見えないところで支え、「花の価値」を再認識させてくれると思います。
②2018年南半球産のボリューム系白の減少
8月30日付情勢報告でも、少し触れましたが、両国ともに不作の結果となり、肥大不足は主に大球に影響しました。
特に肥大が悪かったチリ産では、アベンチュラ、シベリア、パトス、プレミアムブロンドなどで1年栽培の大球が少ない結果となり、逆に肥大が悪くなかった2年栽培球でカバーできた品種もありました。チリの夏は気温が低く、7月23日付チリ出張報告に記載のような芽形成でしたので、規格の調整は良い結果につながるかもしれません。ニュージーランド産も同様に、コンスタンタ、シベリア、ティセント、ファストラーダ、ベンディゴなどの大球でショートとなりました。カサブランカは、バイラスにより生産の約半分に当たる1年栽培の畑の掘り取りを断念し、2年球のみの販売となりました。
欠品品種が多かった一方で、アーレッタ、サイレンティア、サルベティア、シグナム、セダノ、トゥーレガ、パシフィックオーシャンなどは潤沢な供給があり、(まもなく最終の船積みを迎えますが)追加が可能です。
③2018年日本の、夏~秋の気候について
年によって夏から秋の気温の推移は異なりますが、2016、17、18年は、その前の3年(点線グラフ、13-15年平均)と比較しますと温暖化が進んだ事を感じさせます。次頁グラフは、気象庁データによる、高知市の旬別平均気温です。今年2018年(緑のジグザグした太線)は、全国的にも気温が高く、7-8月定植は草丈が取りづらい条件でした。弊社の酷暑試験(7月17日定植)では、ルーティングストッカーを使って、オリエンタルは3週間のルーティングを行い、植付け前に長さを確保することで、全体に草丈が取れるよう工夫しました。
この方法で、同一品種の特質違いでは、下記のような結果が見られ、同じ1年栽培球のオランダ産とLF(フランス産)では、あまり違いが見られませんでしたが、2年球の夏場の活用方法には可能性を感じるところがありました。
さて、9月に入ってからのグラフを見ますと、高温だった2016年(赤線)よりは、涼しかった2017年(青線)に近い感じで推移してきています。
ルーティングなしの定植時期としては、最高気温25℃、最低気温19℃くらい(昼間に長袖を着るくらい)からが目安になるかと思いますが、特に南半球産の10月前半定植は生育がばらつきやすいので、こまめな管理で対処をよろしくお願い致します。10月は、オランダ産抑制球を併用し、1月(特に中旬)に切花出荷の切れ間(端境期)を作らないことが継続出荷のポイントになりそうです。
以上