お客様各位
オランダ出張報告(12月版)
2018年12月18日
株式会社中村農園
中村 慶吾
平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
収穫最盛期のオランダにて情勢調査を行って参りましたので、以下にご報告させていただきます。
今年のオランダは、日本同様に異常気象となっており、特に夏の高温と長期の乾燥、秋の気温の高さなど、過去に経験したことのない気候でした。訪問時(12月上旬)も、観測史上最も暑い12月の日を記録するなど、10月下旬並みの暖かさでした。
① 球根の形状と高めの芽
今年の球根の形は、全般に縦に高く、下根は数が多く、太くしっかりしているものをよく見かけました。(左上の写真はその極端な例です。)
芽は平年のオランダやフランス産に比べて、一回り大きく、長さも太さもありました。写真下は、今回の芽形成調査データの平均値に近い芽です。ニュージーランド産に近いやや高い芽と言えるので、慎重な取扱いが求められます。皆様の球根をできるだけ良い状態でお届けできるよう取組んで参ります。
球根の表面の傷は、11月中旬掘り取りのもので平年並みにあったようですが、その後は地温が下がっており、訪問時に収穫されていた球根はしまっていて、傷は少ないと感じました。
一方で、夏の高温期の潅水などにより、地中でリゾクトニアが発生し、次ページの写真左のように、球根の表面が焼けたようになったものがあり、品質不良で出荷停止になるロットもありました。
又、一部の生産者では、平年よりも二芽が少し多かったと言われており、摘蕾時の高温や乾燥の影響を感じさせます(写真下右)。
② 恵まれた気候と進みすぎた肥大
夏の高温と乾燥により9月上旬時点では肥大が心配されていましたが、平年がやや涼しいオランダにとって、結果的に百合球根の栽培には良い気候になりました。
生産者は「百合球根は価値が高い農作物で、潅水はしっかりやった。霜や大雨は防ぎようがないが、乾燥は人がコントロールできるものだから問題ない。ただし生産コストは高くなった。」と言います。
これまでに掘り取りが進んでいる、LA、OTは全般に肥大が進みすぎており、特にOT品種は16や18が少なく、22、24+が多く出ています。オリエンタルは全般には『平年並み~やや良い』肥大と言えますが、収穫結果は品種ごとにまちまちです。
今年は、大雨による圃場の水没などがなかった年で、特にリンペン畑(ネイキッドスケール)の肥大がとても良く、ある生産者は「売れない品種の種球を捨てても、まだ、来年必要な種球が確保できる」と言っていました。下の写真は1枚のリン片からできた種球の集合体。
③ 球根生産者の好景気は平常化
近年、球根生産者の作付面積は増加をたどり、栽培面積が100Haという大型生産者も珍しくありません(収穫する面積は2年栽培の1年目を除く80%程度)。大型の収穫機は1日に2~4Haの掘り取りが可能で、洗浄機も、選別ラインも、クリスマスまでに作業を終えられるだけの十分な処理能力があります
この5年間は、旺盛なアジア圏(日本以外)の需要により、高額な特大球のコンカドール、マニサ、ロビナなどが大量に売れ、バブルのように儲かる年が続きました。2015年から2018年に、大きな収穫機や倉庫を増築した生産者も少なくなく、好景気を象徴しておりました。
今年、それらのバブル品種が値下がりしましたが、9軒ほど訪問した球根生産者の表情は落ち込んでいるようではありませんでした。
アジアは潜在的には今なお成長市場なのかもしれませんが、一方で中長期的な視点では日本市場にも受け入れられるような、より魅力的な品種の開発も進んで来ています。
④ シベリア
2~3年前に球根相場が安くなり、少し生産面積が減り始めていたシベリアですが、中国を中心に需要は大きく、相場は上がってきています。新しく生産が増えてきた白のOT品種などが売れ残る中で、利幅は大きくないものの各サイズが販売可能な経済的品種として見直されています。今、球根生産者が輸出会社に「なんの品種を作ればいい?」と相談すれば、「シベリア」との答えが多いでしょう。私達が訪問した生産者も「来年は少し面積を増やす」と言っていました。
シベリアは、カサブランカやスターゲザー同様、とても古い品種であり、著作権保護(ライセンス)は今年までで終了し、来年からフリー品種になります。その為、2018年の作付面積統計では、リンペンも2年栽培(一部は種球生産用)も面積が増加しており、来年以降の増産に向けて準備が進んでいます。又、品質の良い生産者の大球が、リンペン用として他の球根生産者に販売されているそうです。(2021年産の供給量には要注意)
一方で、球根は少しずつ年を取っていき、徐々にシベリアが作りづらくなってきたと言うお客様のご意見も承っております。私どもはロット試験場での実際の栽培結果等を慎重に検討し、より良いロットをお納めできるよう努めます。
⑤ 最後に
今年は、秋の異常な暖かさから、球根圃場の枯れ方が遅く、収穫期前半(11月~12月初旬)の掘り取りはやや遅れ、日本への入荷も序盤は遅れが見込まれます。又、それらは地中での冷蔵が平年より短い事が懸念されますので、新球(入即)を加温しているハウスに定植する場合、種々の冷蔵不足による症状(不揃い、花飛び等)も心配されます。弊社といたしましては、自社施設も駆使して促成でも良い結果を出して頂けるよう注意深く仕事を進めてまいります。
皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
以上