株式会社中村農園

レポート・球根情報



2019年オランダ産 作付面積統計(速報値)(2019/8/6)

お客様各位

2019年オランダ産 作付面積統計(速報値)

2019年8月6日
株式会社中村農園
中村 慶吾

 平素は格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。

 先月発表されました表題の件につき、ご報告申し上げます。

 

① 交配系統別面積(ha)について

 下表は、2018年オランダ産(確定値)と2019年産(速報値)を交配系統別に比較したものです。“ハウス内”及び“リン片”の面積は割愛しております。詳しくは弊社ホームページ掲載の面積統計【原語版】をご覧ください。

  2018   2019年(速報値) 前年比(%)
交配系統 2年栽培 その他   2年栽培 その他 その他のみ その他+2年
アジアティック 17.88 190.66   18.42 199.22 104% 104%
LA 35.85 1163.35   31.10 1003.40 86% 86%
鉄砲 0 27.68   0 18.71 68% 68%
オリエンタル 592.75 961.28   544.70 983.03 102% 98%
OT 437.12 728.76   426.60 772.51 106% 103%
上記系統の合計 1083.60 3071.73   1020.82 2976.87 97% 96%

 販売球面積は「2年栽培」と「その他(=通常の1年栽培)」に分かれておりますが、「2年栽培」が販売球用2年栽培のみの面積か、種球の2年栽培(ネイキッドスケール)も含むのかは、オランダ側でも見解が分かれています。

 オランダ産のLAの栽培面積は、ここ数年増え続けてきましたが、19年産は150Ha以上(1年栽培は△13.7%)の大幅減少となり、上記交配系統の合計は、△3~4%と減少しました。アントス(輸出会社が所属する団体)がまとめた、オランダ産の輸出統計では、2016年~18年の(ヨーロッパ域外への)輸出球数は約12億球で変わらず、世界需要は安定しています。

 

 上記グラフはオリエンタル、OTの過去5年(速報値)と比較した面積推移です。

 オリエンタルは全体(1年+2年)で前年比98%の微減ですが、1年栽培が久々に増加しました。オリエンタルとOTの2年栽培が減り、1年が増えたのは、近年の温暖化によるプラス要因として、ネイキッドスケールが普及し、種球の生産性が良くなったことや、2年栽培は収穫作業が大変なことなども考えられます。

 オリエンタルでは、その他(1年)が30Haを超える下記メジャー品種は、いずれも増加しました。昨年12月18日付オランダ出張レポートにて、シベリアのライセンス終了についてお伝えしましたが、早くも今年から面積が急増したことは驚きです。

    2018年産 2019年産

1年の

前年比

交配系統 品種名 2 1 2 1
オリエンタル シベリア 59.15 117.46 66.35 142.87 122%
オリエンタル サンタンダー 31.54 41.77 32.00 42.11 101%
オリエンタル シグナム 21.51 33.75 16.87 37.94 112%
オリエンタル ソルボンヌ 67.53 95.31 64.45 108.47 114%
オリエンタル スターファイター 8.74 32.82 9.09 34.14 104%
オリエンタル タランゴ 18.47 21.88 17.65 30.74 140%

 中規模の品種では、カステラーニ、アイスドリーマー、ピーターシェンク、バンドームなどが増加しています。

 又、八重品種全体は、前年から2倍近くに増加し、ローズリリーのエレナ、イザベラ、タリタは、オリエンタル系品種の平均面積を超えており、今後が期待されているアヌースカ、アイシャ、サマンサ、タチアナ、ビオラなどが増加しています。

 

    2018年産 2019年産

1年の

前年比

交配系統 品種名 2 1 2 1
OT コンカドール 69.35 56.48 62.52 73.56 130%
OT ロビナ 36.47 66.33 34.22 78.30 118%
OT ザンベジ 31.70 77.53 48.64 71.08 92%

 OTでは、2年+その他(1年)が100Haを超える3大品種は、下記のような前年比になっています。 コンカドールは、OT最大の品種で、前年とほぼ同面積のマニサと共に、アジア、中南米の黄色需要を支えています。 ロビナも同様に増加し、世界での濃いピンクや赤の需要の強さを伺えます。

 加えて、下記のような同系品種の面積が勢いよく増加しており、一部では警戒感が出ています。

    2018年産 2019年産

1年の

前年比

交配系統 品種名 2 1 2 1
OT プロフンド 14.91 31.84 21.58 44.76 141%
OT マルダノ 14.71 23.16 19.75 39.95 172%
OT ダイレン 8.21 36.62 10.32 38.37 105%
OT パラッツォ 15.84 16.13 11.06 22.56 140%
OT コンペティション 9.21 10.37 6.59 16.89 163%
OT レッドフォード 0.87 3.82 5.29 10.70 280%

 ザンベジは、2年+その他(1年)の合計は、18年産より約10Ha(9.6%)増加しています。生産性の良さからお求めやすい球根価格となり、世界需要を開拓してきました。一方で、最近は銀行が品種ごとの採算性をチェックするなど、収益が高くない品種は生産減を示唆されるという話もあります。

 ザンベジとの価格競争は、白全体が影響を受けますが、下記の通り、品種ごとに需要見込や球根生産者の期待値は異なるようです。

    2018年産 2019年産

1年の

前年比

交配系統 品種名 2 1 2 1
OT ファストラーダ 4.94 6.33 1.06 0.06 1%
OT メイタイム 4.55 3.65 0.60 0.91 25%
OT フォーエバー 11.07 28.26 7.58 28.21 100%
OT サロンノ 0.00 10.07 0.23 12.19 121%
OT ベスタロ 1.11 2.21 2.76 3.30 149%
OT ティセント 5.73 12.91 8.41 22.38 173%
OT ペタカス 1.85 1.59 1.38 3.60 226%
OT ゲンザーノ 1.91 0.55 1.29 2.59 471%

 

 以下、ご参考としてオリエンタル、OT品種をいくつかご紹介致します。

    2018年産 2019年産

1年の

前年比

交配系統 品種名 2 1 2 1
オリエンタル カサブランカ 5.78 8.57 4.32 7.42 86.6%
オリエンタル コンスタンタ 0.95 2.21 0.65 1.14 51.6%
オリエンタル エマニー 3.22 1.30 2.79 1.61 123.8%
オリエンタル レクサス 2.79 7.06 2.27 4.50 63.7%
オリエンタル マーロン 15.07 31.86 16.35 28.48 89.4%
オリエンタル プレミアムブロンド 7.27 20.73 3.93 17.04 82.2%
オリエンタル シーラ 4.90 4.86 3.33 4.85 99.8%
オリエンタル ソルボンヌ 67.53 95.31 64.45 108.47 113.8%
OT ベルビル 1.10 5.02 3.38 5.54 110.4%
OT エルドレット 3.46 11.81 7.86 6.67 56.5%
OT マスター 2.82 5.66 3.31 8.60 151.9%
OT テーブルダンス 17.36 45.34 17.71 37.55 82.8%
OT タッチストーン 1.84 5.56 3.97 6.21 111.7%
OT イエローウィン 15.39 36.15 15.54 30.83 85.3%
OT ゼルミーラ 0.55 0.68 0.80 1.44 211.8%

 

 以下、LA品種をいくつかご紹介致します。

    2018年産 2019年産

1年の

前年比 

交配系統 品種名 2 1 2 1
LA アルバタックス 0.07 38.00 0.04 28.11 74.0%
LA チェーザレ 0.00 4.60 0.00 4.59 99.8%
LA エルディーボ 3.99 11.30 3.26 9.92 87.8%
LA リトーウェン 3.03 169.07 0.00 144.92 85.7%
LA パビア 0.00 62.77 0.00 63.89 101.8%
LA イエローダイアモンド 1.17 25.41 2.53 12.72 50.1%

 

 

② オランダの気象変動

 栽培面積の増減は重要ですが、球根は露地栽培の農作物であり、最終的な生産量(収穫量)は、生育中の天候に左右されます。

 オランダでも気候変動は年々大きくなっており、ここ数年は、夏の高温と乾燥や、秋の低温と長雨などにより生育が停滞し、大球を中心に想定より10~15%程度少ない収穫結果だったとも言われています。オランダの球根生産者にとって、生産見込みが実際より多ければ、需給バランスで相場に下押し圧力となり、結果的に想定よりも収穫量が少なければ、売上は減少し経営に悪影響を及ぼします。

 下表は、オランダの月間平均気温です。平年値より2℃以上高い所を赤くしています。

 日本人の寿命が30年で5歳伸びたニュースがありましたが、地球温暖化も着々と進んでおり、気温は数十年スパンで見ると、上昇してきている事を実感します。上記19年、18年の月間平均気温が高い部分はフランスと同様の数値になっており、オランダ内でも特に内陸は気温が上がりやすい傾向にあります。今年、オランダの7月は、上中旬が平年よりも涼しく推移し、月間平均気温は特別高くはありませんが、下旬に熱波が入り、地域によっては40℃を記録しました。

 

③ 酷暑試験in中村農園 のご紹介

 現在、弊社試験農場では、7月中旬定植の「真夏の酷暑試験」を実施中です。温暖化が進み、全国的に夏の高温が厳しくなる中、当試験の重要度は増してきました。そこで、昨年の2部屋から、今年は3部屋へと試験品種数を大幅に拡大し、暑さに強い品種、高温下でも美しさを保てる品種を探してまいります。ホームページではご覧いただけない、期間限定の試験で、開花時期は8月末~9月前半を予定しております。(下記写真は8月5日撮影)

 オリエンタル・ОTはルーティング“有り”、LA・鉄砲は“無し”です。

 ハウス内の気温が高く、汗をかかれると思いますので、お着替えをご持参の上、ぜひご来場ください。飲み物をご用意してお待ち申し上げます。

       以上